第22話『完全無欠の美女①』

「闘技場へ来い!決闘だぁぁぁ!!」


アルバートの声が響き渡る。

登校中の生徒達の視線を集めてしまいコウはため息をつく。


「わかった、とりあえず案内して」


目立ちたくないコウはこれ以上騒ぎを大きくしない為、渋々決闘に応じた。

案内されたのは校舎から出た屋根のない建物、コロッセオに似た造りをした闘技場だ。

実技や対抗戦等のイベントでも使われるもので、巨大な正方形のスタジアムが設置されていた。

そこから少し離れて四方に設置された柱はスタジアム全体を覆う結界となっており、観客席に被害を出さない為の魔道具まどうぐだ。


(広いな・・・これなら数十人で一度に戦っても問題ないし、俺が全力で走ってもいきなりリングアウトする事もないな)

「おい!すぐに上がれ!」

「はぁい・・・」


いつまでも怒鳴り散らかすアルバートにうんざりしダラダラとスタジアムに上がる。

周りも面白がった生徒達が観客席へと集まってきていた。

2人がスタジアムに上がった事を確認した生徒の1人が魔道具を起動し、スタジアムが結果で覆われる。

アルバートは既に準備万端といった様相で、籠手に胸当てを付け槍の石突いしづきを地面にガンガンと叩きつけコウを急かす。


「貴様!武器はどうした!?」

「いや、武器って・・・」

(流石に子供相手にはなぁ・・・)

「素手でいいんだよ、俺は」

「武術家と言うわけか、いいだろう。我がレオネス流槍術の前にはどんな武器で挑もうが無駄だがなぁ!」


槍を回し構える。

上段の構えの様に右手を上げているが、左手は曲げた膝と同じ位置にきている。

穂先ほさきが地面につく程に下げられ、突撃の体制なのだとわかる。


(和の槍術とは明らかに別物、一撃必中なのか?)


コウはアルバートの構えを観察する。


「貴様ぁ、構えろ!」

「これが俺の構えだから、いつでもいいよ」

「どこまでも、どこまでも・・・死ねぇ!!」


コウの態度に我慢出来なかったアルバートがスタジアムを蹴る。

間合いを広げる為、左手を離し引いた右手で突きを出す。

コウは手袋を避けた時と同じ様に身体をズラしアッサリと避けた。


「はぁっ!」


避けたコウの顔に向かい槍を薙ぎる。


(なるほど、一撃必中の突きを放ち、避けられても柄を顔に当てる事で隙を作り自身は体制を立て直す・・・考えられてるな)


横薙ぎの攻撃も難なく避けて距離をとる。

アルバートはすかさず距離を縮め、次は細かく連続で突きにいく。

それもコウには当たる事はない。


(才能はあるんだろうけど、突きは一定、フェイントもない。型通りって所か・・・)


避け続けていたコウだったが、このまま続けても意味がないと思い、アルバートの突きに合わせ柄を掴み脇で抱え蹴り飛ばした。

腕を突き出した所に衝撃を受け力が入らず槍を手放してしまったアルバートがスタジアムを転がり腹を抱える。

威力は抑えている為、大したダメージにはなっていなかった。

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