第19話『いざ、学園へ③』

テンゴクの筋力なら、コウの身体を抑えた上で抜き切っていない刀を鞘に納めるのもなんとかなるだろう。

コウは少し戸惑ったが、今の制御されたステータスなら問題ないと考え夜桜を手に取る。

長さは一般的な打刀だが、少し軽い。

おそらくは異世界の刀の為だろう。


「ちょっと!テンゴクさん!何やろうとしてるんですか!?」


2人を見つけたローザリットが慌てて駆け寄ってくる。


「黙ってみとれ!何かあればワシが小僧の腕を掴んで鞘に納める、それならワシも狂気に充てられる事もない」

「ん〜・・・そこまで言うならぁ・・・」


そもそも一度言いだしたら聞かないタイプなのだろう。

ローザリットも説得出来ない事は分かりきっていた為、すぐに諦めテンゴクの後ろに隠れる様に見守る事にした。


(持った限りは特に何も感じない、あくまで業物だろうなって位だな・・・)


一息し、コウはゆっくりを夜桜を抜く。

はばきが見え始めると、黒い霧が溢れ出し、腕に絡まり始める。


(これは・・・)


黒い霧はコウの二の腕辺りまで絡まってきた。

テンゴクがコウの様子を見るが、狂気の予兆はない。

コウはそのまま抜き続けた。


「おい、小僧・・・」


完全に抜ききると、漆黒に染まった刀身があらわになる。


「な、何ともない・・・のか?」

「大丈夫!?具合悪くない!?」

「うん、大丈夫」


コウが改めて夜桜を見ると、はばきに桜のマークが彫られている。


「これは・・・」

「初代テンゴクは桜って木が好きでな、自身が打って納得した刀にだけ桜が彫られたはばきと桜の名を付けていた」


初代テンゴクが打った刀の内、桜の名を冠する物は10本にも満たないと言う。

コウが夜桜を納めると、黒い霧も共に鞘の中へと消えていく。


「ワシも久々に刀身を見た・・・小僧」


テンゴクはコウの前に立つと、頭を下げた。


「礼を言う」


突然の事にコウもローザリットも唖然としていた。

ローザリットからしたら、今までテンゴクが頭を下げた事など一度たりとも見た事無かった。


「決めた、そいつはやる!」

「でも、大切な物なんじゃ・・・」

「刀は使われる為にある。そんなショーケースに飾ったままじゃあの世で師匠に殴られるわ!」


「ガッハッハっ!」と豪快に笑いコウの背中をバンバンと叩く。

コウは叩かれるたび転びそうだ。


「痛い!痛いって!」

「おぉ、悪いな。夜桜があるからいらんとは思うが、いつでも刀は打ってやる!面白い素材があれば持って来い!」


こうして、コウは思いがけず強力な武器を手に入れる事となった。


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