第17話『いざ、学園へ①』

「で、また来たんだ!」


コウは解体を待つ間に頑鉄に来ていた。

先の戦いで刀がダメになってしまったからである。


「えぇ、購入した刀をダメにしてしまって・・・」

「折れちゃった?何したの?」

「ちょっと硬い物を斬ろうとしたのと・・・一振りは溶けちゃって・・・」

「溶けた!?」


コウが放った斬撃の高エネルギーに耐えられなかった刃が溶けてしまったのだ。


「また来たのか」


話しをしていると、丁度刀を店に出しに来たテンゴクと出くわした。

相変わらずコウを見る目は冷たい。


「テンゴクさん!ダメですよ!せっかくテンゴクさんの刀買いに来てくれたのに!」

「先日買いに来たんじゃないのか?」

「あ、いや・・・ダメにしちゃって」

「何だと?」


テンゴクの顔にシワが寄る。

明らかに不機嫌だった。

量産品とは言え、自身が打った物を1日足らずでダメにしてしまったのだ、当然気持ちが良いものではない。


「何をした?」


先程の説明をすると、テンゴクは眉を動かししばらく考え込む。


「小僧、刀を見せろ」


テンゴクに言われ、折れた刀と溶けた刀を渡す。

2振りをそれぞれ観察する。


「小僧、何を斬った?」

「えっと・・・」

(ドラゴンって言っていいのか?アレって頻繁に出てくるのか?・・・でも、この人に嘘は言えないよなぁ)


恐らくテンゴクに嘘をついても刀の状態で嘘だと気づくだろう。


「他言無用でお願いします。昨日、ドラゴンと出会いまして・・・その時にドラゴンを斬ろうとして折れたんです」

「ドラゴン!?」

「黙ってろ、ローザリット。溶けた方は?」

「それは・・・ドラゴンを斬るのにスキルを使って・・・」

「そうか」


話しを聞いたテンゴクは黙ったまま再び刀を見る。

両手で口を押さえたローザリットと緊張したままのコウは息を飲んでテンゴクを見ていた。


「小僧、そこに刀を持ってついてこい」

「え、はい・・・」


テンゴクに言われるがまま店の刀を手に取り、ついていく。


「テンゴクさ〜ん!私、いつまで黙ってれば良いの!?」

「もう良い、店に戻ってろ」

「ぷはぁ」


ローザリットは少し天然の様だ。


「小僧、何故お前は刀を使う?」

「俺、記憶喪失なんです。だから何故かは答えられません。ただ、1番手に馴染んだので」

「・・・そうか」


鍛冶場を過ぎて裏口に出た所、そこには小さな庭があった。

建物に囲われている為か、少し薄暗い。

テンゴクは隅に置いてあったわらの塊を立てる。


「こいつは巻き藁まきわらと言う。竹にわらを巻いて固定した物だ」

(知ってる)

「こいつを斬れ」


テンゴクはそう言うと、少し離れて無造作に置かれた丸太に座った。

コウは刀を抜き巻き藁まきわらの前へと立つ。


(懐かしいな・・・爺ちゃんが亡くなってからは相手してくれる人もいなかったし、良く使ったっけ)


懐かしみながら上段に構える。

精神を集中させ、袈裟斬りに振り下ろす。

振り下ろされた刀、巻き藁まきわらは斜めにズリ落ちた。

見ていたテンゴクの目が見開かれる。

コウの動きが見えなかった事、斬られた巻き藁まきわらが全く揺れる事なかった事に驚きを隠せなかった。


「小僧!その技術、誰から教わった?」

「いゃ、だから記憶喪失で分からないんですよ」

「そうだったな・・・よし、打ってやる」

「え?」

「量産品じゃお前の腕に刀がついていけねぇ、ワシがお前専用の刀を打ってやる!」

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