第15話『緊急イベント発生③』

(ゴブリン討伐は明日にするかな・・・ん?)


暗くなった草原の先、森が広がる先で空気が震える程の咆哮が響いた。

瞬間、森から逃げる鳥が見える。


(何かヤバい気配・・・)


第六感の影響か、見えない筈の声の主に危機感を感じる。

王都に戻るにもそれなりの距離がある。

急いで帰ったとして敵が攻めてくるのが先になる可能性がある。

コウは即座に森へと走り出した。


(やっぱり速くなってる。あっという間に着いちゃった)


森は最初にいた場所にあったものよりサイズは小さいが、月明かりを妨げる様に鬱蒼うっそうとしていた。

コウはそのまま森の中を駆ける。

途中、コウを気にかける事なく動物や魔獣が逃げる姿が見えた。


(流石に動物意外は危険だよな)


出来る限り速度を落とさずすれ違い様に斬り伏せていく。

しばらくすると、森の真ん中に岩山が見えてきた。

木が無くなり月明かりが見える。


「こいつ・・・」


月明かりに照らされ現れたのは、艶やかな鱗にトカゲの姿、コウモリの翼、巨大な爪に牙を持つ伝説の生物。


「ドラ・・・ゴ、ン?」


鱗は見える角度で色が変わるのか、様々な色が混ざった様な色をしている。

ドラゴンはコウを見つけると、巨大な前足で踏み潰しにきた。

かろうじでそれを避け、身体の下を走り抜ける。

そのまま尻尾を斬りつけるが、傷を付ける事は出来ず、刃が欠けた。


「かっ・・・た!」


振り切った所を狙われドラゴンの尻尾がコウを襲う。

咄嗟に間に折れた刀を挟んだが、片足で踏み止まる事も出来ず、岩山に叩き付けられる。


「いっ・・・たい!けど、あれ?」


岩がえぐれる程叩きつけられた筈が、骨も折れてないし、身体に異常はない。

あるのは擦り傷程度だった。


(これ、ステータスのおかげか?これならやれる!)


岩を蹴り再びドラゴンと対峙する。

何ともなく現れたコウに驚いた様子を見せたドラゴンだったが、すぐに切り替えエネルギーを溜め始めた。

コウはストレージより刀を取り出し、鞘に納めたまま構える。

居合術、抜刀術とも呼ばれる。

納刀した状態から素早く刀を抜き対峙した相手を斬る術だ。

速さを求める術とも言われ、上段に構えた状態の相手にさえ優位をとれる可能性もある。

コウは構えたままイメージする。

通常の刀では斬れない程の硬いドラゴンを斬るイメージ・・・巨大な身体を両断するイメージを・・・。


・・・」


ドラゴンのブレスが吐き出され、高エネルギーの光線がコウを襲う。


「『虚空断ちそらだち』!」


抜いた刃からマナの刃が解き放たれる。

刃は音を置き去り光線を断ち、そのままドラゴンを真っ二つにしながら通過し消えていった。

コウの横を切り裂かれた光線が通り過ぎ木々を消し去り、しばらくの静寂に包まれる。

抜いた刀をゆっくりと納刀し、深く息を吐く。


「はぁ・・・」


動かないドラゴンを見ると、まるで斬られていない様に切り口が見えない。

それ程までに鋭く綺麗に、今にも襲いかかってきそうな佇まいのまま絶命している。


「どうしよう・・・これ」

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