第12話『定番の頑固な刀鍛治②』

「いらっしゃいませぇ!!」


ピコピコと張った猫耳を動かして近づいてきた獣族の女性、近距離での大声に耳を塞ぐコウ。

所々火傷の痕が見える、恐らくは彼女も鍛治を行う職人なのだろう。


「武器が欲しいのですが」

「はい!あちらが武器、そっちは防具、防具は見本なので、寸法を測って作成します!オーダーメイドも承りますよ!」

「あ、ありがとうございます。とりあえず武器見せてもらいますね」


展示された武器を見る。

壁に掛かっている物は値段も高く質が良い物の様だ。


(流石に金額10枚を超えるのは厳しいな、出来るだけ金額を抑えつつ質が良い物を・・・)


コウは安価で売っている樽に入った刀を手に取る。

鞘から抜くと顔を写す程、綺麗な刀身が見える。


(綺麗な刃文だ、勧められただけはある)


改めて店内を見渡すと、ショーケースに入った一本の刀を見つけた。

鞘に納められ刀身は見えないが、業物だとわかる程のオーラがあった。

魅入られる様にショーケースの前に立つ。


「あの、これって売り物ですか?」

「違うよ、それ妖刀だから売れない!」

「妖刀・・・」


ここの職人の1人の所有物らしい。

東の国から流れてきた職人で、現在はオーダーメイドの刀鍛治をしている。

他の職人と違い刀鍛治しかしないが、腕の良さもあり他国からの依頼も多く、毎日刀を打っている。


「オーダーメイドって、いくらします?」

「え?」

「刀のオーダーメイドです、いくらになります?」

「あ、えーと・・・」


刀のオーダーメイドと聞き急にタジタジとしだす。

なんだか乗り気でない。


「じゃ、じゃぁ待ってて!今テンゴクさん呼んでくるから!」


そう言うとカウンターの奥へと足早に消えていった。

しばらくすると、奥からガタイの良い男性が現れた。


「お前か、小僧。ワシの刀が欲しいのは」

「は、はい・・・」


テンゴクと呼ばれた男の威圧感に思わず後退る。

立派に蓄えられたヒゲ、筋肉質で丸太の様な分厚い腕と足、職人なのか歴戦の選手なのかわからない。

男は眼光でコウを射抜くかと思う程上から下を値踏みする。


「・・・てのひらを見せろ」


言われるがままてのひらを見せる。

しばらく見つめていたが、やがてため息をついて振り返った。


「帰れ」

「ちょ、何で!?」

「そんな綺麗な手にワシの刀を打ってやるつもりはない。そこにある物を使って腕を磨け」


振り向きもせずにそう言うと、テンゴクはそのまま奥へと戻って行く。

その後、女性に頭を下げられた。

テンゴクは拘りが強く、必ずしもオーダーメイドを受けてくれる訳ではないらしい。

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