第10話『チート能力がチート過ぎた⑥』

-エクストラスキル『マナ放出』を習得しました-


「え?」

「はい?」

「いゃ、何でもないです!えっと、スキルを得る為にはどうすれば良いんですか?」

「こちらのパネルに手を置いて下さい。それにより、スキルの適正があればスキル習得のアナウンスが頭に流れるはずです」

(あぁ、これはもしかして・・・)


コウは悟った様にパネルに手を乗せる。

乗せた掌のマークが薄っすらと光るが、当然アナウンスなどない。


「習得出来ましたか?」

「えぇ、覚えられました」


話せる訳がない。

恐らくこれも創成者の力なのだろう。

適正ジョブが決定したからなのか、何が発動条件なのか分からないが、どうやらスキルパネル無しでもスキル習得が可能の様だ。


(チートにチートが重なっていく・・・目立つわけにはいかないなぁ)

「頭痛いですか?」

「あぁ、いぇ!スキルの使用方法とかが頭に入ってきてビックリしただけで」

「なるほど、確かに初めてはビックリしますよね。落ち着くまであちらのテーブルで休みます?」

「大丈夫です、続けて下さい」

「分かりました」


コウの顔色を伺いつつ、リンはスキルパネルを仕舞い説明を続けた。


「次に、カードの裏側には上から拠点となるギルド名、自身のギルド名、自身のクラン名が刻まれます。拠点ギルドは上が冒険者ギルド、下が商業ギルドです。今は我がフルーンが登録されてますが、各ギルドで変更可能です。素材の買取りや出店の手続きは拠点ギルドでしか行えません」

(なるほど、登録ギルドが分かれば冒険者がどの辺りにいるかわかるし、変更もギルドが関わるから不正もし辛くなる)

「以上が基本的なギルドカードの説明になります。気になる事がありましたら、いつでも聞いて下さいね」

「ありがとうございます」


コウが受付を後にしようとした時、待っていたであろうミレイユが頭を下げ近づいてきた。


「コウさん、先程の件についてギルドマスターシルバからお話しがございます」

「わかりました」


シルバの部屋へと向かうと、机の上に積まれた書類の山に隠れたシルバがいた。

コウが入ってきた事に気づいたシルバは書類を崩さない様にコウの元へと行く。


「すみません、コウ君。ギルドカード、受け取ってくれた様ですね」

「はい。それで、俺の名前の事なんですが・・・」

「それについては、私の独断になってしまいます。現状、コウ君は記憶喪失、本来貴族にしかない姓を不特定多数の者に知られればどんな諍いいさかいに巻き込まれるかわかりません。ですので、記憶が戻るまでは姓を名乗らぬ方が良いと判断しました」


コウが貴族だと分かれば、貴族同士の諍いだけでなく、最悪の場合は暗殺や誘拐の危険性さえある。

もちろん、コウの力があれば毛ほども心配する必要はないが、シルバはコウの力を知らない為、予防線を張ったのだ。

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