間章『星の管理者』

第1話『神』

虹を転生させてから数分、青年はテーブルに置かれた紅茶を呑んでいた。

自ら創り上げた世界が発展していくのを見守りながら、コウが転生するのを待っていた。


「うん、上手くいったかな・・・流石にいつの時代に転生したかはわからないけど、魂はしっかりと送られた様だ」


転生自体が全ての世界において初めてだった事もあり、魂を送り届ける事しか出来なかったらしい。

それにより、いつの時代に転生されるのかはわからなくなっていた。

青年が改めて紅茶を口に含むと、無音だった空間を明らかに苛立ちをもった足音が音を立てて近づいてきた。

音を立てている主は、テーブルまで来ると両手を叩きつけ青年へと迫る。


「どういう事だ!何故勝手に転生させた!?しかも何故彼だ!?」

「落ち着いて下さいよ、主神しゅしん様」


主神と呼ばれた女性は輝く金の髪を振り乱し興奮を抑えようとしない。


「主神と呼ぶな!何故彼を転生した!?私はそこまで許可した覚えはない!」

「お互いに呼び名が無くてはいけないと言い出したのは貴女ですよ?だからみんなで決めたじゃないですか・・・それに、僕は僕の世界の為に手伝いがほしいと言ったはずですよ?主神様が地球の神から死亡リストを受け取り僕に渡した。僕はその中から虹を選び、僕の世界の為に守護者として転生させた。何が悪いんです?」

「転生は本来、その星の種が消えぬ様にその世界の輪廻の波に魂を流し再び新たな肉体に定着させる為に使われるだ!他の星に使えば何が起こるかわからないし、他の星のバランスが崩れ星の破滅に繋がる!」

「地球は充分な数の生命を産んでいますよ、地球の神だって何も問題ないから連絡をしてこないんでしょう?」

「お前と違って彼らは自分の星の中で起きている事なんて気にしていない・・・ただ、星が破滅しない様に見守り続けているだけだ」

「そこに住まう者達が滅びようが、世界そのものが残ればいい・・・確かに何度も聞きましたよ、だからこそみんな地球を真似て世界を創り続けてる。僕もそうでしたしね」


主神に睨まれても落ち着いた様子で話しを続ける青年。

神は世界の破滅が起きぬ様、

それは決して彼らがそこに住まう者達を見守っていない事を意味していた。


「お前は生まれた時から他とは違かった。私達は星を創り維持し続ける為にいる。私達の呼び名も、互いに不便だからと言うから付けただけで、私達は。私達は・・・『星の管理者』だ」

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