第13話『八神虹の秘密②』

「普段のゴーン君の使用武器はバトルアックス、今回は随分と破壊に重きを置いた武器にした様ですね」

「大方、コウが選んだ武器を見たんだろう。あの細さならバルディッシュで簡単に折る事が出来るし、そのままコウへもダメージを与えられる。あの野郎、もしかして事故に見せてコウをるきじゃねぇだろうな?」

「ガイ、苛立つのはわかるが抑えろ。ギルドマスターもいるんだ、何かあれば止めてくれる」

「えぇ、もちろん。彼が本当に危なくなったのなら、私が止めますよ?」


含みのある言い方をして口髭をいじるシルバ。

その間に2人は互いの武器を携え向かい合っていた。


「そんな小せぇ得物えもの、間違ってお前ごと叩き折っちまいそうだなぁ」


ゴーンはニヤニヤとコウへと詰め寄る。

ガイの予想通り、ゴーンは武器破壊を狙っていた。

もちろん、そのままコウを亡き者にしようとも考えている。

しかし、そんな考えもコウは気づいていた。


「まともに当たれば・・・ね」

「このガキが!!」

「そこまで!これはあくまで試験だ、必要以上にやり過ぎれば止めに入る、いいな?」

「ちっ・・・」


試験を見守る審判役の職員が静止する。

舌打ちをして下がるゴーン、無言のまま一礼をして下がるコウ。

互いに開始位置へと下がると、コウは正眼の構えをとる。

剣道などに見られる一般的な構えである。

対するゴーンは、斧頭を後ろに下げる。

明らかに突撃する構えだ。


「堂に入ってますね、まるでずっとそうしてきたかの様だ」


シルバの言葉通り、コウの構えには隙がない。

だからこそ、ゴーンは一撃で終わらせるつもりでいた。

いくら隙が無かろうと、子供の力で大人の力を、それも遠心力を加えた一撃を防ぐ事は不可能だと考えたからだ。


「それでは、試験を始めます!試験はどちらかが棄権するか戦闘不能と判断した時点で終了となります。よろしいですね?」

「あぁ!」

「はい」

「それでは・・・始め!」


審判の開始合図と同時にゴーンは飛び出した。

一気にコウへと肉薄にくはくすると、勢いそのままにコウの脇腹とバルディッシュを振った。


ゴッ!!!


鈍い音と共にコウが吹き飛ぶ。

それを追う様に土埃が立ち込めた。


「はっ!!ガキが!避ける事すら出来やしねぇ!」

「コウ!!」

「大丈夫です。しっかり防いでいました。それに、衝突の瞬間、足を浮かせていた。力に争わずそのまま飛ばされたんでしょう。恐らくダメージはほぼ無いでしょう」

「・・・腐っても冒険者だぞ?それを相手にそんな芸当が出来るってのか?」

「ですが、我々は実際にそれを見ている。違いますか?」


バラン達は互いに見合うと、改めて土埃が立ち込め姿が見えないコウの方へと向き直す。

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