第12話『八神虹の秘密①』

真っ先に声を上げたのは先程助けられたミラだ。


「ミラさん、今私はコウ君と話しをしています。まだ彼の応えを聞いていませんよ?」

「す、すみません・・・」


シルバの言葉にミラはうつむく。

冒険者の世界は自己責任、例え試験であっても全ては己で答えを出さねばならないのだ。


「わかりました。その試験、お受けします」

「なっ!?コウ!」

「バラン君、彼が決めた事です。私達が口を挟んで良い事ではありたせんよ?」

(ギルドマスター、どうしちまった!?そんな無茶あんたが許すわけねぇのに・・・)

「なぁ、ギルドマス・・・」

「大丈夫です、彼は負けませんよ?」


なんとか止めようとシルバに迫ったバラン達に、シルバは聞こえる程度の声で告げた。

その言葉にそれ以上何も言い返せない。

かつてSランク冒険者として数々の討伐を成し得てきた英雄パーティーの1人、ライフルタイプの魔動武器まどうぶき魔銃まがんを操り、その場から動かず相手を撃ち抜く姿は気品すら感じられた。

それを支えたのは相手の挙動きょどうを見逃さない観察力と洞察力。

ゆえに、シルバは相手を観る事である程度の実力を測る事が出来る。

そのシルバが負けないと言っているのだ。


「バラン、どうする?本気で止めるなら俺からも言ってやるが・・・」

「いや・・・正直、俺達だって今日会ったばかりなんだ。コウの実力を見ていない以上、ギルドマスターを信じるしかないだろう」

「ゴーン君、聞きましたね?君が試験官として、コウ君の相手をして下さい。勝てば今回の事は不問としましょう」


シルバの言葉に黙って聞いていたゴーンはニヤリと笑う。


「良いぜ、先輩がしっかりとお相手してやるよ」


すっかり鼻血も止まり、痛みもとれていつもの調子に戻っていた。

歯は欠けたままだが・・・


「それでは、地下の訓練場を使用します。武器は木製の物を使用。こちらで用意していますので、お二人とも好きに選んで下さい。もちろん、スキルの使用も許可しますよ」


2人の戦いを観ようと訓練場に冒険者が詰めかける。

面白半分の者、心配して来た者、シルバの態度に引っかかった者、様々な感情が渦巻く中、コウとゴーンはそれぞれ武器を選択する。


(これ、木刀だ・・・長さも・・・うん、色々揃ってるな)


コウは大小ある木刀の内、70cmほどの短めの物を選んだ。

身体に合わせたのだが、側から見れば細く短い木刀はコウの身長も相まって頼りなく見える。

対するゴーンが選んだのはバルディッシュ。

長い柄に巨大な斧頭ふとうを付けた斧だ。

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