第8話『西の国と冒険者ギルド④』

(さすが首都・・・凄い城壁だ、城塞都市ってやつじゃないのか?)


馬車を走らせて数分、見えてきたのは都市を囲む立派な城壁だった。

バランが言うには、魔獣や魔物が城壁近くまで現れた際に備えているとの事。

城壁に近づくにつれ、その巨大さに圧倒される。


「凄いですね、こんな大きい城壁・・・首が」

「はは!飛行する魔獣にも備えてるからな。」


入り口に近づくと、鎧を纏った兵士が並んだ人達を一人一人チェックしている。

兵士の1人がガイを見つけて近づいてきた。

バラン達も馬車から顔を出す。


「よぅ!相変わらず我が街は平和そうだな!」

「あぁ、こっちは問題ない。お前達の方こそ無事だったんだな」

「何かあったのか?」

「街の外で光の柱が現れたらしい。すぐに消えたが念の為、街の近くにいた奴らは全員街に避難させていたんだ」

(それ、俺のせいなんじゃ・・・)


恐らくコウが使った創成術による光が、この街の人々を混乱させてしまったようだ。

良く見れば周りの兵士達はせわしなく走り回っていた。


「ん?バラン、その子は?」

「記憶喪失の子供だ、街の外で出会ってな。捜索の依頼が来てないかギルドに行ってみようと思う」

「そうか、大変だったな。記憶が戻ると良いな」


兵士は優しくコウの頭を撫でる。

なんだが罪悪感を覚える。


「ありがとうございます」

(あぁ、この優しさが逆に辛い・・・でも、本当の事なんて話せないよなぁ)

「さぁ、コウ!ここが俺達の街だ!」


門を潜るとそこは、中世を思わせる街並みが広がっていた。

レンガ作りの建物が並び、馬車や人が行き交う。

非常に賑わっていた。


「凄い・・・」


本日何度目かの驚き。

前世では見る事の出来なかった世界が目の前に広がっている。

ふと、良く見ると周りを歩いてる人達の中に明らかに人でない者達がいた。


「バラン・・・さん、あの人達・・・」

「バランで良いぞ?ん?獣族けものぞくの事か?」

「獣族・・・」

「ここは魔獣や魔物が多いからな、人族だけじゃなくて獣族やエルフ族、ドワーフ族に龍人族りゅうじんぞくなんかもいるぞ?」

「色々な種族の人達がいるんですね」


目を輝かしているコウを見てバランの頬が緩む。

コウの見た目は子供の為、バランから見ればはしゃいでいる子供にしか見えない。


「さぁ、馬車を置いたらいよいよ冒険者ギルドだ!」


冒険者ギルドは、馬車の停車場から遠くない立派な造りだった。

二階建ての建物には大きな看板で『冒険者ギルド フルーン』と書かれていた。

中に入ると、食事をする者、談笑する者、活気に溢れていた。


(昔、先輩に連れて行かれたクラブもこんな感じだったな・・・あの時は人が多すぎて人に酔ったけど・・・)

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