第7話『西の国と冒険者ギルド③』

「記憶喪失ってやつか、よくここまで頑張ったな!」


バランはコウの頭を撫でる。

少し力が入っていて痛い。

うっすら涙を溜めている所を見ると、バランは情に厚い性格をしている様だ。

少し罪悪感を覚えるコウだった。


「そ、それで、出来れば簡単にこの辺りの事を聞きたいのですが・・・」

「おぅ!色々話せばお前の記憶が戻るかもしれないしな。まずは国の事から話していくか」

「お願いします」

「このアークラムには、それぞれ大きな大陸がいくつも存在してる。俺達が今いるのは4つの国から出来てる」


バランの話しでは、4つの国はそれぞれ

-北の国『ギルズレイン』-

-西の国『フルーン』-

-東の国『ジポン』-

-南の国『ラナウ』-

から出来ていると言う。

今コウ達がいる場所は西の国。

試練の森の先には南の国があるそうだ。


(ジポン・・・これって日本か?名前が似てるだけなのか?)

「どうした?何か思い出せたか?」

「いえ!そ、それぞれどんな国なのかなぁって」

「そうだな、俺達の住むこのフルーンは、広大な自然が特徴だ。農家や家畜業が盛んで、食うもんが美味いぞ!」

「いや、そんな話し聞きたいわけじゃねーだろ」


バランが涎を拭うのをガイは呆れた様子で見る。


「確かに自然豊かだが、その分魔獣や魔物が多い。さっきのブラックウルフもそうだ。まぁ、本来は試練の森の中に群れでいるんだが・・・」


ガイは腕を組んで険しい表情になる。

どうやらただの強面ではなく、癖なのだろう。


「だから、冒険者も他の国より多いぞ!俺達もフルーンの冒険者だ」

「冒険者・・・」

「興味あるか!コウはステータスの見方はわかるか?」

「えっと、はい・・・」

(大丈夫だよな、見られても変には見られないはず・・・)

「ステータスオープン」


コウは恐る恐るステータスを開く。

しかし、バラン達は特に見ている様子がない。


「あの、ステータス開いたんですが・・・」

「ん?あぁ、そうか、わからないよな。ステータスは人には見えないんだよ」


もっと早く知りたかった・・・

わざわざステータスを偽った意味がなかったらしい。


(これなら俺の正体もバレなくなる。良かったぁ)


コウは安堵した。


「レベルはいくつだ?」

「レベルは1です」

「やはりな。まだ子供だろうし、冒険者には新人の為の研修もある。街に着いたら案内してやろう!」

「ありがとうございます!」


コウには願ったり叶ったりだ。

街に行けば情報も手に入りやすいし、何よりお金を稼がなくては生きていけない。


「だったら、もう出るぞ?早くしねーと、暗くなれば面倒な事になるしな」


ガイは馬を走らせた。

目指すは西の国フルーンの首都『王都フルーン』。

豊かな自然に囲まれた街である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る