第8話 宣伝


「そういえば、今度文化祭があるのだけれど・・・・・・よかったらあなた、見に来るかしら?」


 シャー芯のきみは唐突にそう切り出した。


「私たち美術部も、展示があるから、良かったら見に来てね」

「展示・・・・・・というとあれか。例のアトランティスか」

「そうよ」


 いつになく上機嫌に、胸を張るシャー芯の君。


 アトランティス、か。かつてスマホの写真で見せられた、幻想的な絵画が思い浮かぶ。


「ようやく、あの絵も完成に近づいてきたことだし・・・・・・他にもいろいろとね、面白いものを用意しているわよ。乞うご期待、てところね」


 彼女はそう言うと、カバンからチラシを取り出し、俺に押しつけてくる。


 美術部が作ったのだろう。日時と場所、それから「謎の古代都市・アトランティス展」という文字と、イラストが印刷されていた。


「なんか、本格的だな・・・・・・」

「ええ。本格的よ。といっても、アトランティスの存在そのものが、伝説に過ぎないから、多分に空想の要素は入っているけれど。それも含めて楽しめてもらえたら、嬉しいわ」


 今日の彼女は、随分と饒舌だな。この前みたく、何かを誤魔化すように言葉を連射してくるのではなく、密やかで確固たる自信を土台にして、落ち着いた言葉がその口から出てきている。


「もちろん、ただ来てくれとは言わないわよ。もしあなたが来てくれたら、私の方からもちょっとしたお返しをしてあげる」

「へえ。なんかくれるのか?お菓子とか」

「ん・・・・・・そうね、お菓子もいいわね、考えとくわ」


 あれ?違ったのか?


「とにかく。いい?最終的には、来る来ないはあなたの自由だけれど・・・・・・良かったら来てね。私が言いたいことはそれだけよ。じゃ」


 シャー芯の君はそう言うと、去って行った。

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