第4話 休日
シャー芯の
「あら?珍しいわね、こんな休みの日に出会うなんて・・・・・・大学生も、私たち高校生みたいに休日に登校しないといけないのかしら?」
心の奥底から不思議だという感じの彼女に、俺は返す。
「いや。大学じゃなくって、バイトだバイト」
「ああ、なるほど。道理で合点がいったわ。大学生といえば、平日だろうと休日だろうとお昼頃まで寝ているイメージだったけれど、そんなこともないのね」
「ちょっと、いやかなり大学生への偏見が強くないか?たとえ授業はそこそこでも、バイトやサークルで結構忙しいものだぞ。・・・・・・あ、もちろん大学の勉強を真面目にちゃんとしている俺みたいな学生もいるけれどな?」
やや誇張を含んだものの言い方に、シャー芯の君は怪訝そうな目で俺を見てくる。
「ふうん・・・・・・そこまで勉強熱心な大学生には、見えないけれどね」
「失敬な。人を見かけで判断してはいけないって教わらなかったのか?」
「・・・・・・それについてはあなたが正論ね。気を悪くしたら謝るわ。ごめんなさい」
ペコリと頭を下げる彼女。お、意外と素直な子なのかな?
「別に気にしていないから大丈夫だ。それよりそっちこそ、こんな休日になんの用事だ?」
「部活よ部活」
「へえ、なんのの部活にはいっているんだ?」
「美術部よ。といっても、割と自由奔放というか、融通無碍というか・・・・・・いい加減、という表現が一番ぴったりかしら。とにかく、そういう部活よ」
「へえ・・・・・・」
美術部、ていうとみんなでコツコツと絵を描いているイメージしかないが。自由奔放な美術部、てどんな感じなんだろう。
「でもね。いくら自由といっても、こうして休日に活動しなきゃならないこともあるからね・・・・・・ま、楽しいからいいのだけれどね」
そう言う彼女の口調は、本心から楽しそうだった。
「具体的には、なにを描いているんだ?抽象画とか?」
「違うわよ。というか、普通、絵を描いている高校生に“抽象画”とか聞くかしら?」
「仕方ないだろ。絵とか全然分かんねえし」
やれやれ、といった感じでシャー芯の君は溜息をつく。
「違うわよ。私たちが描いているのは、古代都市アトランティス・・・・・・あら、駅に着いたみたいね。それじゃ私は降りるわね」
会話をさらりと打ち切り、シャー芯の君は車内から出て行った。
古代都市アトランティス・・・・・・妙な単語を残して去っていったな。なんのことか分からんが、今度会ったときに尋ねよう。というか、毎回妙なところで話が中断されるので、連絡先を聞いておきたい気持ちもあるが、お互いに名前も知らない男子大学生が、女子高生に連絡先は聞きにくいしな。来週には会えると信じておこう。
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