グリーンスライムに転生した俺は、呪われた異世界を緑でいっぱいにするようです。

はねまる

第1章:枯れ木の世界にこんにちは

1:枯れ木の森のスライム

 あらゆる人間関係から楽になりたい。


 そんな願いを抱き続けて20余年。

 いよいよ心を病んでしまって、色々あった末に散々な死に方をした俺であるが、


 ──────《ステータス》────────

【種族】グリーンスライム


レベル:3

神性:0

体力:4/4

魔力:3/3

敏捷:2

魔攻:3

魔防:4


【スキル】[スキルポイント:4]

・光合成Lv1

 ────────────────────


 その末路が、はい。

 こんなになっているのだった。

 曇天の下、どこまで続くとも知れない枯れ木の森。

 その灰色の地面の上で、うじゅるうじゅるっていたりするのだ。


 直径は30センチぐらいだろうか?

 そんな大きさの軟体生物。

 スライム。

 グリーンスライム。

 まぁ、驚きだった。

 死んだと思ったら変な白い空間にいたのだ。

 で、きれいな女の人に「願いは?」なんて聞かれたから、「もう人間関係で苦しむのは嫌だ」って俺は返した。

 そうしたら、コレだ。

 気がついたら、こんな体で地面を這っていた。


 当初の感想としては、最高の2文字だった。


 もう人間関係に悩みようなんて無かった。

 スライムなのだ。

 グリーンだかなんだか知らないが、ともあれ言葉も喋れない軟体生物の一匹に過ぎないのだ。

 湿った地面を這いずり回ることしか出来ず、その不自由さが俺には最高だった。

 見下され、邪険にされるだけの関係に心を砕く必要はもう無い。

 友達と呼べる者は1人としておらず、両親にすら見放されたという事実に、ミジメな思いを抱く必要も無い。


 最高だった。

 下等生物、最高。

 この体にしてくれてありがとうって、白い空間での彼女に何度思ったか分からないのだが……うん。


 この体になって、大体10日は経っただろうか。

 少しばかり思うところが出てきたのだった。

 俺は周囲を見渡す。 

 そこにあるのは枯れ木の森だ。

 どこまでも続く無味乾燥むみかんそうな光景。

 何もいなかった。

 そう、何もいない。

 虫の声も無い。

 鳥のさえずりも無い。

 ましてや人の声など、どれだけ耳を澄まそうが聞こえてこない。


 俺は正直に思うのだった。

 

(さ、寂しすぎない……?)


 いや、うん。


 まさか俺がこんなことを思うなんてって感じではあるのだが。

 くっそ寂しい。

 ほんと、マジで寂しい。

 生命の気配が無いというのが、こうも心細くさせてくれるものだとは思わなかった。

 そして、なによりも人間だ。

 俺は自分を含めて人間が嫌いだった。

 滅んでしまえと思ったことは数知れない。

 ただ……実際誰1人としていないとなると、うん。

 なんだか声が聞きたかった。

 誰でも良い。

 人の気配を間近にしたかった。


 人間は社会的な生物だと聞いたことがある。

 まぁ、俺もその中の一匹だったってことだろうかね? 

 ちょっと受け入れがたいところはあるが……まぁ、そんなものなのかも知れなかった。


 ともあれ、ではどうするか?

 大事なのはそこなのだけど……う、うーむ。


 俺はあらためて周囲を見渡す。

 枯れ木だ。

 見事にどこまでも枯れ木しかない。


 なにかしらの自然災害でも起きたのかどうか。

 まったく枯れ木しかないのだ。

 一度がんばってはみた。

 目指せ人里と決意して、じゅるじゅる這い続けてみた。

 だが、行けども行けどもだった。

 スライムの速度があわれってこともあるろうが、まるで甲斐無し。

 結局、枯れ木に次ぐ枯れ木を目の当たりにしただけだった。


(……うーん)


 人間の時だったら腕組みをしていたに違いなかった。

 悩ましい。

 どうしたら良いですかね?

 人間が向こうから来てくれたらそれが一番なんなのだが、こんなとこにわざわざ来ないよな。

 枯れ木しかないし、枯れ木が欲しいならここまで来る必要はまったく無いだろうし。


 何か必要だった。

 人間にここを目指そうと思わせる理由。

 せめて目立たないといけないだろうか。

 例えば、そう。

 枯れ木の森で、ここだけ緑に溢れていれば。

 御神木ごしんぼくのような巨大な木が生えていて、周りには色とりどりの花々が咲き誇っていれば。


 観光需要はありそうな気がした。

 少なくとも、ちょっと見に行こうって気にはさせられるかな?

 ただ、俺は悩まざるを得ない。

 俺、スライムだしなぁ?

 緑化なんて考えるのもおこがましいレベルだった。

 なにせ、手足も無く這いずり回ることしか出来ない我が身なのだ。

 

 でも、どうにかしたかった。

 なんとか誰かを間近にしたかった。

 諦めたくはないけど、どうだ?

 こうなると無駄だと分かっていても、這い回るしかなさそうだけど……ん?


 ────────《ログ》────────

※スキルポイントが4あります

・『候補』種子生成Lv1[必要:1ポイント]

・『候補』土壌改良Lv1[必要:1ポイント]

 ────────────────────

 

 俺はまじまじとログとやらを見つめることになった。

 これは……ふーむ?

 希望が見えてきたって、そういうことでいいんですかね?

 

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