第2話 冒険者に勝利!?

「さーて、今日もダンジョン経営やったりますかー!」


 空元気を振り絞る。正直ダンジョン経営が上手くいかなさすぎて今にでもやめてしまいたいのであった。これ以上続けても無理そうな気がする。


「よーし、スライムさんはこの前全滅した! モンスターはいない! 私がモンスター! っておかしいだろぉ!!!」


 1人芝居をしていた。人間窮地に追い込まれるとおかしくなってしまうものなのかもしれない。とにかくモンスターはダンジョンにいないのでトラップを導入してみることにした。


「ダンジョンといえばきっとトラップとかもあるはずだよねー。上からタライが落ちてきたりとか、歩いている時に落とし穴に落ちたりとか、またまた突然大きな大岩が目の前から転がってきたりとか!」


 そういうトラップを作っていかないと生き残れないのかもしれない。


「予算がないなら自分で作って工夫していくしかないのよ! これ以上はスライムくんをむやみやたらに生成するわけにもいかないし…。うーん、なら私が戦うしかないのでは?」

 ただ私はとても力が弱い。だから頭を使って生き残っていかなければならないのだ。


「あーもんどうすればいいんだー!」


 頭をかきむしる。


「トラップを作成するにも時間がかかる。かと言ってダンジョンをそのまま開けていたらそのままアイテムだけ取られていってしまう。えーい、私が冒険者に立ちはだかるしかあるまーい! とにかく金がないんじゃーーー!!!!」


 こうしてなんやかんやで冒険者が私のダンジョンにやってくる。


「ここのダンジョンすっげぇ簡単らしいぜ!」

「え、詳しく聞かせろよー!」

「なんでも初心者におすすめの雑魚狩りコースだってさ」

「なんかつまんなそうなダンジョンだな」


 私は岩影から冒険者たちを見ていた。


「ええ!?  私のダンジョンって巷ではそんな扱いなのぉ!? 」


 動揺を隠し切れなかった。


「さぁ、雑魚狩りでもしていきますかな」

「だな、さっさとこんなダンジョンなんか探索し終えて今日はパーッと豪勢にやろうや」

「おー、それいいねー」


 影からそれを見ている。くー! 私もパーッとやりたい! 最後にそんなことやったのいつだっけ? じゃなかった集中だ。

 もう一度言うけど私に力なんてないからバトルの開始時点でもう勝負はほとんど決まるのよ。あのパーティーは見たところ4人ほどいる。

 私1人じゃ4人相手を同時にするのは絶対に無理! なんなら1人相手でも正直キツイわ。とにかくすぐに決着をつけるのよツラス! 頑張れツラス!

 長期戦は絶対にダメ! 超短期決戦で一発勝負しか今の私に勝ち目はない! そして戦いのときは来た。


「おっ、さっそくモンスターがおでましか? 軽く捻ってやるぜっ…ってなんだありゃ!!!!」

「 ガォーーーーーー! 」


 そこにはものすごいでかいドラゴンの影があった。


「これやばくねぇか!」

「なんだこのダンジョン! 初心者用じゃねぇのかよ! 」

「おい誰だよ嘘ついたやつ! 」

「お前ら、いのちだいじに!ってことで逃げるぞ!」

「うわーん、ママーン!」

「 ガォーーーー!」


 ドラゴンが鳴き叫ぶ。


「ふぅー、なんとかなりましたー。とりあえず突貫工事ででかいドラゴンに見えるように適当に物を置いてライトを 照らしただけなんだけどねー。あとはドラゴンの鳴き声をラジオから大音量で流したらなんとか逃げてくれた。」


 とりあえず冒険者たちを追い払ってホッとしていた。


「よしよし、ちゃんとあの人たち逃げるときにお金落としていったなー。さてとー、久しぶりに豪勢にパーッとやろうかなー! 私の1人勝ちなのである!」


 今日のダンジョン経営はこれで終わりであった。夜のダンジョンはそもそも行くまでがとても危険なのでほとんど人は来ない。

 そして私は早めに町に繰り出して今日の勝利の宴のための酒と食べ物を買い込むのであった。


「うわ、これうまー。わたし生きてて良かったー! あーっこっちもうまー。この瞬間のために生きてるって言っても過言じゃないっすねー」


 そこには幸せそうなツラスちゃんの顔があった。


「これは酒もどんどん進んじゃいますわー。私の宴はまだまだこれからー! どんどん追加じゃー! 今日は久しぶりの勝利なんだからとことん祝うぞー!」


そして次の日…

「うわー二日酔いだー気持ち悪い。オェー!!! って、 あー! 私の昨日の働いた分が口から出てったー!  もったいな、オェー!!!!」


 まだまだ赤字続きのダンジョン経営になりそうだ。


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