モヤモヤする帰り道
「はぁ……」
帰り道を俺はため息をついて帰っていた。
「……なんだかなぁ…………⁉」
何とも言えないモヤモヤした気持ちを抱きながら、歩いていた時、突然ガサゴソという音がして、森の中から熊さん……ではなく、グラハムが現れた。
今日も昨日と同じように血まみれの大ナタを背負っている。
グラハムは、俺の事を見つけると手を上げて軽く声をかけてきた。
「よっ、また狩りに来たのか?」
「……ん、そう」
「そうか……あ、そうだ。お前、これ忘れてただろ?」
そう言って、グラハムが見せてきたのは俺のカバンだった。
そう言えばゴブリンと戦うときに近くに放り投げてたんだった。
「あ、ありがと……」
「がっはっはっは、もう無くすなよ? 高かったからなソレ。がっはっはっは!」
「……ん分かった」
そう言って、カバンを受け取ると肩にかけなおす。
「今日は一匹か?」
「……そうだね」
「そうかそうか」
「……ねえ、父さん」
「何だ?」
俺はグラハムを見てゆっくりと話した。
「俺は、魔物を殺したけど……でも、それっていけないことなのかな……なんて」
「なんでそんなこと思ったんだ?」
「……なんとなく」
「そうか」
グラハムはそう言うと、少し悩んでこう答えた。
「父さんはな、魔物を狩ることがいい事か悪い事かなんて考えたこともない」
そう言って答えたグラハムの言葉に、そりゃそうかと思った。
グラハムって奴はどうしようもなく生き死にに対して冷たい男だった、『黒黒』の世界で、部下が死んだとしても「そうか」の一言で済ませるような……そんな男にとって魔物の生き死になんてどうでもいい事か。
「でもまあ……お前が魔物を殺すのがお前が生きることにつながるのなら、俺はいい事だとは思うけどな」
「……なんか言った?」
「ん? がっはっは! 何でもねえよ、お、いい匂いしてきたな! 今日の飯は何だろうな!」
そう言って、グラハムは笑って歩いていく。
全く、この男は……気楽そうで羨ましいよ。
「はぁ……」
「……おーい、早く帰るぞ~」
「ん、分かった」
ま、でも……この世界で生きるにはグラハムみたいな考え方をしておいた方がいいのかもしれないな。
なんて思って、俺はグラハムの後を追いかけて走ったのだった。
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