32. 魔道具ギルドへ
競売も終わり、たっぷり資金を手に入れた私たち。
次に向かう先は魔道具ギルドだ。
この街の魔道具技師はほとんど魔道具ギルドに登録しているらしい。
なので、魔道具ギルドに行けば商品見本を見ることが出来るのだ。
早速行ってみよう。
「ミラーさん、魔道具ギルドではどんな品を仕入れるんですか?」
「それは状況次第です。どんな魔道具があってどれだけ仕入れられるかは、本当に運次第なところもあります。既に伝手があれば事前に発注しておくことも出来ますが、私たちは違いますからね」
「わかりました。私たちの目利き次第と言うことですね!」
「そうとも言えます。がんばりましょう、シエル様」
「はい!」
商業ギルドからさほど経たずに馬車が泊まった。
護衛のアーリーがドアを開けて教えてくれたが、魔道具ギルドに到着したみたい。
あまり場所が離れていなかったようだ。
魔道具ギルドに入るといつも通り身分証を提示し、いつも通りギルドマスターが出てきた。
私はゆっくり魔道具が見たかっただけなんだけど。
それを告げると、魔道具ギルドのギルドマスターは少しあいさつをしただけで担当部署の者を連れてきてくれることになった。
特別扱いはしなくちゃいけないけど、私の希望は尊重してもらえるのか。
ありがたいね。
少し待たされてやってきたのは、眼鏡が似合う天翼人の男性だった。
早速、魔道具が展示されているスペースへと案内してもらったけど、なにこれ⁉
部屋中が魔道具でいっぱいだ!
「……と、まあ、当ギルドの展示スペースは案内役がいないと、一カ月かけてなお目的の物が見つかるかわかりません。具体的にどのような魔道具がお望みでしょう?」
これだけの魔道具を前にして具体的な要望か。
ちょっと困った。
「では、小型の煮炊き釜のような物はありますか?」
私が迷っていると、ミラーさんが注文を出した。
それを受け、案内役の男性はするすると魔道具の中を案内してくれる。
たどり着いた場所にはいくつもの魔道具が並べられていた。
「小型の煮炊き釜となるとここにあるものでしょうか。専用の鍋を入れて温める物や円形状になった火の吹き出し口から火を出して鍋を温める物などです」
「なるほど。専用の鍋を使う方の利点は?」
「火力が強いことでしょう。専用だけあって熱の通り方が素晴らしいです。欠点は鍋が壊れると使えなくなることですね」
いくら火力が強くても鍋が壊れると使えなくなるのはなぁ。
さすがにそっちはなしだね。
もうひとつの方はどうなんだろう?
「もう片方の利点はある程度好きな形の鍋を使えることでしょうか。火力も薪と大差ないので便利です。欠点は燃料が魔石ということですね」
「魔石? 魔石ってモンスターを倒せば手に入るんですよね?」
「はい、その通りです。ただ、弱いモンスターからは小さな魔石しか手に入らないことが一般的で、強い魔道具を動かすには大きな魔石が必要なんです」
そうなんだ。
あれ、そうなるとダルクウィンの漁師ギルドで使われていた冷蔵装置はどうなるんだろう?
そこも聞いてみると意外な答えが帰って来た。
「超大型の魔道具となると設計に幅ができるのです。それを使い、寄せ集めの魔石から魔力を引き出すことに成功しているのでしょう」
「それって小型の魔道具じゃ出来ないんですか?」
「一般的には出来ないとされていますね。複数の魔石から同時に魔力を吸収するとき発生する熱と圧力に耐えられる設計が出来る技師がほぼおりません」
ほぼ?
じゃあ、数名でもいいからいるってことだよね。
その人たちはどうなんだろう?
「申し訳ありません。それらの方々は各地に散らばり大型魔道具作製の指揮を執っております。この街には残っておりません。ただ……」
「ただ?」
「ひとりだけ、この街に残っている方がおります。その方は大型魔道具の作製を得意とせず、大型魔道具の理論を小型魔道具へ組み込もうとする、言わば変人扱いされる方なのですが」
いいじゃない!
その技術、いい感じ!
でも、詳しく話を聞くと、最近は研究資金にも困っていてなかなか新しい魔道具を作れないそうだ。
普通の魔道具を作って生活の足しにすればいいじゃない、と思ったんだけど、その人の魔道具は『小型化』と『持続性』に特化しておりそれ以外はなんの魅力もないそうだ。
デザインも凡庸なため、売れる数も限られているんだとか。
持続性が高いってすごく魅力的に感じるんだけど。
街の人たちだとそう感じないのかな?
ともかく、私たちはその人を紹介してもらうことにした。
もしかしたらいい魔道具を開発しているかもしれないし、アイディアが優れていたら出資者として名を連ねるのも悪くはない、というのがミラーさんの判断だ。
私も持続性に優れた魔道具というものを見てみたい。
すぐにその人の家に向かってみよう。
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