20. テイマーギルドへ
青果物ギルドを出発し、次に向かうこととなったのはテイマーギルドだ。
ここで豆柴様たちを私のテイムモンスターとして登録するという。
街中でモンスターを連れ歩くにはテイムモンスターとして登録されている必要があるらしい。
豆柴様たちはモンスターではないが、ほかの人から見ると狼系のモンスターと見られることもあるとか。
さすがにこんな可愛いらしい狼はいないと思うけど、先に予防しておいた方がいいとのことだ。
私も豆柴様たちに窮屈な思いをしてはほしくないのでテイムモンスターとして登録させてもらおう。
テイマーギルドは街の外れの方にあった。
広い敷地があるようだが、敷地のほとんどが高い壁に囲まれている。
ミラーさんによると、敷地内からモンスターが逃げ出すことがないようにするためらしい。
馬車から見ると壁だけど実際には天井まで覆われており、空を飛ぶモンスターも逃げられないようになっているのだとか。
テイマーギルドではテイムモンスターの登録のほか、事前に捕まえているモンスターと契約して買うことも出来るようだ。
外からテイムモンスターをつれて来る場合はほとんどが完全に手なづけてあるが、テイマーギルドで契約を試す場合はそうではないため逃亡防止の壁がいるみたい。
どのギルドも大変だ。
テイマーギルドに着いたら豆柴様たちをつれてギルドの中に入る。
ギルド内にはいろいろなモンスターをつれた人たちがいた。
そんな中でも豆柴様たちは目立っている。
やっぱり小さいからかな。
さて、登録の窓口はと。
「シエル様、新規登録はあちらの窓口です」
「あ、ありがとうございます、ミラーさん」
ミラーさんが教えてくれた窓口には、確かに「新規登録」と書かれていた。
でも、その窓口に並んでいる人はいない。
空いているから助かるんだけど、どうしてだろう?
窓口の担当者に聞いてみればわかるかな。
「すみません。新規登録をお願いしたいのですが」
「はい。新規のテイマー登録ですね?」
「え?」
「ここはテイマーとして新規に登録する方の窓口です。モンスターだけの登録でしたらあちらの窓口にお並びください」
なるほど、テイマーとしての新規登録だから空いていたんだ。
私はテイマー登録をしていないからこの窓口だね。
「テイマーとしても新規登録になります。どうすればいいですか?」
「わかりました。まず、身分証をお願いします」
「はい。どうぞ」
「ありがとうございます。……って、銀の身分証⁉」
「あの、なにか問題がありましたか?」
「い、いえ。テイムモンスターが問題を起こした場合、テイマーの責任となるためあまり身分の高い方はテイマー登録をしないので、つい」
ああ、なるほど。
テイムモンスターが問題を起こしたら主人であるテイマーの面子が潰れるのか。
だから、身分の高い人はテイマー登録をしないんだね。
私は豆柴様たちを信じているから問題ないけど。
「問題ありません。手続きを進めてください」
「わかりました。……ッ⁉ 少々お待ち下さい! 上の者を呼んで参ります!」
あ、私は『ラルク商会』の関係者だった。
それは受付担当だと処理できないよね。
だけど、自分から申し出ることもできないし仕方がないか。
「お待たせいたしました。私が当ギルドマスターのカルメンと申します」
「青空運送商会のシエルと申します。今日はよろしくお願いします」
「いや、驚きました。まさか『ラルク商会』のお孫様がテイマー登録をなさるとは」
「私はこの子たちの保護者ですので」
「この子たち……?」
私が豆柴様を呼んだため、豆柴様たちが一斉に吠えた。
ホールに「ワン!」と元気な声が響き渡る。
あくまで『元気な声』であり、迫力はまったくない。
しかし、愛嬌たっぷりの声は周囲の注目を集めるには十分だったようだ。
「なに、あのモンスター。可愛い……」
「見た目は可愛いらしいが狼の系譜か? いや、それにしては小さすぎる」
「あんなモンスターで戦うことが出来るのか?」
うーん、やっぱり小さい豆柴様たちは目立つなぁ。
モンスターは大きくて頑丈そうな方が強く見えるから、テイマーがつれているモンスターもそっちの傾向が強い。
そんな中に豆柴様たちがいるのだから場違い感が強いよね。
どうしたものか。
「おや。登録するのは『犬』ですか」
「え? 知っているんですか、カルメンさん」
「私の知っている犬はもっと大きくて強そうな種類ですが、狼系とは顔つきが違いますからね。種族は別でもなんとなくわかります」
「よかった。この子たちは豆柴様です」
「豆柴……聞いたことがありません。ともかく、テイムモンスターとしての登録が必要なのでこちらへ」
豆柴様の種族までは知らなかったのか。
やっぱり犬は珍しいみたい。
でも、テイムモンスターの登録ってなにをするんだろう。
荒っぽいことじゃないといいけど。
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