第三章 青空運送商会始めます!

11. お付きの人たちの自己紹介

 私はダルクウィン公爵様のお屋敷を出発する前に最後の装備点検をした。

 ドラゴン様からいただいた馬車は完璧だし、ヴィンケルが引いてくれることになったので馬も必要なくなった。

 幻獣様に引いてもらうのは恐れ多いけど、本人がやりたがっている以上無碍に出来ない。

 申し訳ないけどお願いしよう。


 あと、食料品はこれから行く『ダルクウィンの街』で購入する。

 ダルクウィンの街はダルクウィン公爵様の直轄地であるため、治安もよく人口も多いそうだ。

 港もあり各地から様々な品物が集まってくる一大拠点でもあるらしい。

 私のような商人が最初に目指す街もダルクウィンであることが多いとか。

 ただ、その分ものの良し悪しを見極める能力を持っていないと偽物をつかまされることもあるようだ。

 初めの商売は慎重に行こう。


「シエル様。出発の準備が整いました」


 私が決意を新たにしていると後ろから声がかかった。

 振り向くとミラーさんを初め、今回私に付いてくることになっている人たちが勢揃いしている。

 騎士の4人も先ほどまでのフルプレート装備からブレストプレートだけとか革鎧など動きやすい装備に変えたようだ。

 これからお世話になるんだしあいさつを……。


「シエル様、先に私たちの方からごあいさつさせていただきます」


「あ、はい」


 どうやら主人になる私の方からあいさつをするのはだめらしい。

 ミラーさんがしきってくれるようなのでお任せしよう。


「まずはメイドたちの紹介を。緑の翼をもった天翼族がチーフのプリメーラ、犬人族のメイドがドローレスです」


「プリメーラと申します。今後はシエル様の身の回りのお世話を担当させていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします」


「ど、ドローレスです! まだ若いですが頑張らせていただきます!」


 あ、緑の翼の人は結構あったことがある。

 何度もお世話をしてくれた人だ。

 最初から私のところに来ることが決まっていたのかな?


 ドローレスは知らない顔だ。

 プリメーラさんから話を聞くと、天翼族国家内で生まれた獣人族らしく、職に困っていたところをダルクウィン公爵が引き取ったらしい。

 今回、私の元に派遣されるのもある意味修行の一環なんだとか。


「次に護衛の紹介を。剣を携えているのが隊長のアーリー、槍を持っているのがカルラ、弓をもった猫人族がパネサ、杖をもっているのがエマとなります」


 剣を持っているのがアーリーさん。

 真っ赤な髪に赤い瞳、赤銅色の翼と赤尽くめだ。

 ブレストプレートと盾も赤く塗られているし、なにか意味があるのだろうか?


「アーリーさん。アーリーさんの装備が赤く塗られているのはなぜですか?」


「ああ、これでございますか。わざと目立ち敵をおびき寄せるためです。いまは発光していませんが、魔力を通すと薄ぼんやりと光るんですよ。それで敵をおびき寄せ、仲間を守りながら戦うのが私の役目になります」


 ひえっ、かなり恐ろしい役割だった。

 でも、アーリーさんはこの役割を何十年も続けていて、重症を負ったことは一度もないそうだ。

 単独でも強いらしいし頼りにしよう。


 槍を持っているカルラさんは金髪に緑の瞳、白い翼と天翼族ではもっともポピュラーな組み合わせの髪色や翼の色をしている。

 ただ、彼女も細めの腕に似合わずかなりの膂力があり、軽そうに見えてかなり重量のある短槍を振り回すことが出来るようだ。

 ちなみに、下級貴族の四女で貴族の役目として軍属を目指していたんだとか。

 この国では貴族の役目のひとつとして戦力の保有が挙げられ、貴族は相応の戦闘力がなくてはならない。

 なので、カルラさんみたいな戦士も珍しくないんだとか。


 パネサさんは猫人族でドローレスさんと同じように天翼族国家出身の獣人族だ。

 彼女の主な役目は斥候職で周囲の状況を詳しく調べるのが役目らしい。

 赤いターバンから突き出した耳がなんというか、かわいい。


 エマさんはこのメンバーでもっとも年齢が高いそうでそろそろ200歳に届くらしい。

 でもまだまだ現役らしく黒髪に黒瞳、紫色の翼はまったく衰えを見せていない。

 眼光も鋭く、知性的な大人という感じがする

 とんがり帽子の中から伸びるロングヘアーもあり、まさに魔女という印象だ。


「そして、最後が私、ミラーとなります。合計7名、以後よろしくお願いいたします」


 ミラーさんは初めて会った時と同じく銀髪をショートボブにし蒼色の瞳と濡羽色の翼もっている。

 服装は三つボタンのスーツというものらしく、また最初に会ったときにはかけていなかったメガネをかけていた。

 普段はかけないらしいが、必要に応じてメガネを付けるらしい。


 これで全員の自己紹介はしてもらった。

 あとは私とヴィンケル、それから豆柴様たちだけだ。


「私はシエルと言います。まだこの国に来て一カ月程度の未熟者ですが、どうぞよろしくお願いします」


『ヴィンケルだ。シエルの契約幻獣として行動を共にする。シエルを守る最後の壁になる予定だ。無理はしないようにな』


 ヴィンケルってば素直じゃないなぁ。

 大人しく、怪我のない程度に頼む、とか言えばいいのに。


「わふ! わふ!」


「あ、豆柴様たちにも名前をつけました。赤い首輪がボスのコロ、黄色い首輪がモフ、青い首輪がソラ、白い首輪がハク、黒い首輪がマユです。みんな整列!」


 私の合図で豆柴たちが一列に並んだ。

 ピシッとお座りをしてばっちり決まっている。

 うん、これなら大丈夫そう。


 ともかく、街に向かう準備は整った。

 あとはみんなの荷物を馬車に積み込んで出発するだけだ。

 ダルクウィンの街ってどんな場所なんだろう。

 楽しみだな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る