第74話 誘導電波で縁結び

「けどちょうど良かった! 今さっき呼び出されちゃってね。一馬、理乃と真麻連れて家帰っててくれない? 仕事入っちゃった」


 ユカちゃんが時計を確認しながら切り出した。


「お仕事ですか?」

「うん。知り合いがやってるお店、たまに手伝いで入ってるの。カフェだよ。夜になるとお酒も出す、ちょっと大人なカフェ」


 彼女が手渡してきたのは、その店のショップカードだろう。名刺サイズのそれを見れば、住所はジョージくんが働いているライブハウスの近くだった。


「ほぼスナックだろ。常連のジジイどもしか来ねえ」

「もー。そういうこと言うなって。若いお客さんにも来てもらえるように、ちょっと頑張ってるところなんだからさ。ジョージくんとフサ子ちゃん、今度飲みにきてよ! 悠里ちゃんも昼間においで」

「あ、このお店知ってますよ。僕の職場の近く」

「え? そうなの?」

「次の出勤日、寄りますね」

「わー! ありがと!」


 会話する大人達の間を、シャボン玉がふわふわと漂ってくる。子供たち四人は、ストローを咥えてふーふーと音を立てていた。

 風のない穏やかな昼下がり。冬の太陽に照らされて、虹色の玉がゆらゆら揺れながら空へと昇っていく。


「じゃあ、一馬。頼んだよ」

「ああ」

「寝かしつけまでには帰れると思うから。悠里ちゃん、夕飯食べてって良いからね」

「ありがとうございます」

「ばぁば、いってらっしゃーい」




◇◇◇





 ユカちゃんを見送ると、公園の中は地球人とエイリアン半々になった。


「縁を結びたいな、と思ったんです」


 八幡ちゃんが私と秋月くんに言った。


「縁」

「そう、縁です。僕たち異星人と地球人との縁を、広げたくなったんです。既にお友達の一馬くんの家族なら、入りやすいですから」


 どうやらこの公園でユカちゃんと二人の孫娘が異星人達と出会ったのは、ただの偶然ではないらしい。


「八幡さん推薦の地球人ならば、私もぜひお知り合いになっておきたいですからね」


 ヨネ子ちゃんはあの日と同じ口調で説明した。理乃ちゃんと真麻ちゃんの二人は、シャボン液でヌルヌルになった手を洗いに行ったので、近くにはいなかった。


「誘導電波を使い、ユカさん達三人をこの公園まで導かせていただきました。人体に無害な電波ですから、ご安心を」


 レプレプ星人のこの説明によって、ユカちゃんがいつもの公園ではなく、何となくこの場所へ足を運んだ理由が判明したのだった。

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