第53話 寂しがり屋のエイリアン
「あれ? ジョージくんだ」
駅構内の書店で、エプロン姿のプルプル星人を見かけた。私の声に気づいたジョージくんが手を振りながら近づいてくる。
「本屋さんでも働いてるの?」
「うん。大体夕方のこの時間帯にシフト入れてる」
「夜は別のとこで働いてるんでしょ?」
「そうだよ。ライブハウス」
「で、朝は」
「キオスク」
「働き過ぎじゃない?」
ジョージくんと知り合って数日が経っていた。私の家の最寄り駅が彼の仕事場であることを知ってから、私達は毎朝顔を合わせるようになった。一人暮らししているアパートは、なんと同じ町内だった。
「一人で家にいるより、働いてるほうが良いんだ。職場が複数あれば色んな地球人と関われるし、寂しくない……駅って、大勢の人が行き交うでしょ」
ジョージくんは寂しがり屋だ。私の部屋に同居する八幡ちゃんを羨ましがり、あわよくば自分も……と言い出して、そんな提案を秋月くんに即却下されていた。
「静かな場所より、がやがやした場所の方が落ち着くんだよね」
「へえ」
私は人混みは苦手なので、彼のこの感覚は新鮮だ。
「それにライブハウスは労働してるって感じないんだ。音に溢れてて、とても楽しいよ」
「ジョージくん、音楽好きなの?」
「大好きだよ。歌うの好きだし、踊るのも、楽器をいじるのも好き。今度オーナーからウクレレ教えてもらうんだ。楽しみだなあ」
書棚を整えながら、エイリアンは鼻歌を歌いだした。私と会話を続けながらも、商品を扱う彼の手際は乱れることがない。生活を整えるまで苦労したと語った彼だったが、今では十分社会の中に溶け込めているのだろう。三箇所も職場を掛け持ちできているのだから、そこら辺の地球人よりもよっぽど要領よく生きているに違いない。少なくとも私よりは確実だ。
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