★第8話 本当にいたんだ?こんな頭パーな奴

私はクソ男と議論して、家を出ていったあと、とりあえず奈緒美のところに行くことにした。奈緒美には今までの成り行きを全て話し、二人でハイタッチをした。


「いやぁ、まじで良かったね?これでいっちゃんも独り身かぁ〜」

「なんだろう。独身って言われると傷つくけど、独り身って言われると開放感あるな。」

「ほんといっちゃんってそういうとこ変わってるよね。てか、弁護士雇ったんだってね?」

「まあ、法に詳しい人が頼りだからね。」


弁護士を雇う上でお金は結構かかったけど、あとでクソ男からたんまりお金もらうからこんなのどうってことない。


ヴーヴー


「あれ、私じゃない。いっちゃんの携帯鳴ってない?」


奈緒美に言われ、私の携帯を見ると確かに鳴っていたが、あのクソ男からだった。


「げ。」

「なになに、どしたんいっちゃん。」

「あのクソから電話きた…」

「まじ?!なんなんだよまじで。まあ、このセリフはいっちゃんが一番言いたいだろうけど。どうすんの?出るの?」

「…出る。」

「うぇ?!出んの?!」

「スピーカーにするから奈緒美も聞いてて。」


私は応答ボタンをスライドさせた。


「何なのよ今更。」

『なあ!!郁江いくえ!!よりを戻さないか!!』

「はーあ?なに言ってんのよ?」

『ほら、郁江もさ、今独り身で寂しいだろ?俺と一緒にいればまた楽しいライフが待ってるからさ!一緒にまた熱い夜を過ごそうぜ?!』

「お言葉ですが、郁江さんにはもう、彼氏がいます。」


いきなり、後ろから声がしてびっくりした。振り返ると、そこには順平じゅんぺいがいた。


『はあ?!お前、誰だよ?!男みたいな声の低さしやがって!郁江は、俺のもんだ!なあ?郁江!俺のもとへ帰ってきてくれ!』

「どうせあんたのことだし、ご両親にも絶縁を言い渡されたんでしょ?それに、会社もクビにされたんでしょ?そんなあんたのもとに帰りたい女はいませんから!!!」

『だって…だって…』

「だってだってじゃありません!もう連絡先全てブロックします!後のことは全て弁護士さんを通してください!さようなら!」

『せめて住所だけでm…』


プツ。


あいつがまだ喋り途中であったが、そんなことは気にせずに電話を切った。

私は今すごく気になってることがある。順平が言っていたことだ。


「ねえ、順平。さっき言ってたこと、どういうこと?私、彼氏いないけど。」

「確かにそれな?順平、真相を明らかにせよ!」


順平はあっちの方を向いて、こっちを見てくれない。

だが、心なしか、順平の耳が赤い。


「…あれは僕なりの…告白だったんだけどな…」

「えー??声が小さくて聞こえないよ!」

「なんでもありません。でも助かったでしょう。。」

「まあ助かったけどね。でもあんなとんでもない嘘ついちゃだめだよー?」

「後に本当になりますから。」


順平は、では、と言ってあっちへ行ってしまった。


一体何だったんだろう…?

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