第3話 いざ、人物特定へ。【奈緒美兄妹】
「こんにちはぁ…」
「あ、もしかして郁江が言ってた奈緒美さん兄妹ですか?」
「はい、そうです。よろしくお願いします!」
「じゃあちょっと裏に来てもらっても良い?郁江から言われてること言わなくちゃだから。」
いっちゃんの友達はそう言い、私達を裏に案内した。
裏…というかまあ、スタッフオンリーの事務室みたいなところだ。
ラブホなのに、とても整っていて、整理整頓がしっかりなされている。
案外広かった。
「じゃあ、ここの椅子に座ってくれる?」
いっちゃんの友達はここだよと指を指したので、そこに座った。
「じゃあ早速、伝言を伝えます。あ、その前に名前言わなきゃね。私の名前は、
そう言って、心海さんは、説明を始めた。
「まずは、レジをしてもらうんだけど、流石にこの格好や見た目だと、郁江の旦那さんに即バレしちゃうから、なんらかの変装というか、バレないようにしたいと思います。制服は着てもらって、お三方にはちょっとした化粧等をしていただきます。化粧は、メイクをしてくれる方がいるので、後でご紹介します。あと、レジと言っても、まあ、接客業なんだけど、主に受付をしてもらいます。」
心海さんは、受付のやり方を丁寧に教えてくれた。
「…このぐらいかな。わかりましたか?」
「はい。僕たちにそんなにできるかはわかりませんが、頑張ります。」
「あ、そうだ。従業員にはこのこととお三方のことは伝えてあるので、お気になさらず。では、早速入りましょうか!」
そう言ってみんなは席を立った。やっばいね。いっちゃんの役に立てるのかしら私。
で、でも、任されたからには頑張ろう。信用されてるってことだもんね。
***
シュイン(自動ドアの開く音)
「いらっしゃいませ。何名様ですか。」
「二人で。」
「どのコースをお選びになりますか?」
「フリータイムコースで。」
「フリータイムコースですと、午前6時から午後6時まで一律料金となります。お会計は退室時になります。お部屋番号をお選びください。」
「じゃあ、247号室で。」
「かしこまりました。…こちらがルームキーになります。」
「ありがとうございます。」
あるカップルみたいなペアが部屋に向かっていった。あれは間違いない。
勇さんと夏菜子さんだ。
「(あの人、今日普通に平日なのに…仕事のはずよね?こりゃ、いっちゃんに報告だな。)」
―――いっちゃん。勇さん、平日なのにラブホ早速来たよ。一応報告しておきます。
私はそうメッセージを送って、スマホを閉じた。
「…あれ?」
姉貴がいきなり言葉を発するものだからびっくりした。
「どうした、京夏。」
いや、前々から思ってたけど、喋り方とかが彼氏なんよ。兄貴はそういうつもりで話していないのはわかってるんだけどね?
「ここに、スマホ忘れていってる。」
「「え?」」
姉貴が指差すところを見ると確かに手帳型のスマホが置かれていた。これはもしや勇さんの…?
「勇さんのだったら証拠になるから、京夏、ちょっと見てみて。」
「うん。わかった」
姉貴は手袋をして、スマホを取った。なんか…手慣れてない?
姉貴はスマホの電源をつけ、スワイプした。するとあらびっくり。開いちゃったよ。
「まあある意味…妻を信頼してる…んじゃない?」
姉貴はそう言って、迷わず某メッセージアプリを開いた。
そこには、複数の女の名前が載っていた。
夏菜子
結梨
計5人のいっちゃん以外の女の名前を検出できた。
早速私はいっちゃんにメッセージを送った。
―――只今、あのバカ旦那、自分のスマホをカウンターに置き忘れたので、私達が中を覗いたら計5人の女の名前を取得しました。名前は、沙奈恵、理奈、唯織とおなじみの女二人です。
よく考えてみて、この状況かなりエグくない?しかも、スマホのロックもしてないとか…気づかない彼女さんもすごいな。
「とりあえず、写真完了。あとは、郁江ちゃんに勇さんのスマホからのスクショを送って、送信取り消しはせずに削除だけして完了です。」
「了解。」
***
「今日は本当にありがとうございました。」
「いえいえ。郁江の役に立てるのであれば何でも言ってください。」
本当に心海さんは優しいな。
私達はラブホから出て、すぐさま家に向かった。
***
「ただいまー」
「あ、おかえり!」
「おかえり。」
時刻は夕方4時。二人は何をしていたのであろうか。
「いっちゃん、何してたの?」
「順平と、奈緒美から送られてきたスクショを印刷して、話し合ってたよ。」
流石はいっちゃん。天才。それとも私が馬鹿?てかなんで今その話になるのよ??
「あのね、私びっくりしちゃったことがあるんだ。」
「え、なに?」
「奈緒美に送ってもらった女の名前さ、全員私の同じ学校だった同級生なんだよね…」
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