4章

第9話

 四人で初めて歩いた後楽園は新緑の時期でもあり、若々しい匂いを感じた。園内の緑がこれから始まる二人の新婚生活を表しているようだ。

 白と赤のツツジが咲く唯心山に登る。山と言っても小高い丘だ。それでもその山頂に登ると後楽園が一望出来た。木曜日ということもあり、人は少ない。嫁は近所の個人病院で受付や事務をして働いている。医療事務の資格を取ったのだと言っていた。木曜日は昼からお休みだ。丁度誕生日が木曜日だったため、有給をとったのだ。

 息子と夫も今日は休んでいる。いつも真面目に働いているからか、特に他の従業員から苦情が出ることはないらしい。

 唯心山から見える景色は美しかった。芝生の緑、お茶の緑、木々の緑。緑のグラデーションが美しい季節だ。唯心山のツツジの花も美しいし、アヤメや藤の花も見える。それでも、頼子はこの景色の主役は緑だと思う。

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