2章

第4話

 頼子が物思いに耽っていると後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。

「お義母さん!」

 嫁だ。一ヶ月前、息子は結婚した。頼子は振り返る。嫁が可愛らしくかけて来る。その後ろに息子と夫の姿があった。

 今日、息子夫婦が入籍した。結婚式は一ヶ月前に済ませている。家族だけの小さな式。嫁の提案で私の誕生日に行われたその式はとても心温まる式だった。入籍は嫁の誕生日である今日にすると息子が決めたらしい。

 息子が家に女の子を連れてくることは珍しくはなかった。男友達と同じように女の子の友達もよく来ていたからだ。息子が嫁を初めて連れて来た日。まだ二人は付き合ってもいなかった。だけど、頼子はこの子とは長い付き合いになるなと確信した。息子の雰囲気が違っていたのだ。とてもリラックスしていたし、息子の雰囲気がとても柔らかかった。

 二人は、いつの間にか付き合い、婚約していた。頼子達が息子から後日聞いた話。彼女の母親が大学三年の時に膵臓癌で亡くなった。その時に彼女の母親の病室で二人は婚約式をした。その時の写真を頼子は息子にもらった。頼子たちには事後承諾だったけれど、その写真に写る皆の顔が幸せそうで納得した。大学卒業と当時に結婚したかった二人は、大学四年の時に就職活動と同時に結婚式の準備も進めていた。学生の頃から二人で結婚資金を貯めるためにバイトもしていた。親ができることは多くはない。嫁の家から結婚資金に百万、頼子の家からも百万用意した。それで、息子夫婦は結婚式と新居を準備した。息子の就職先は夫の会社だ。夫が3代目になる家業が木工業。夫は一度東京の商社で働いていたが、息子は本人の希望で親の会社に就職した。

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