天城つぼみと、虎狩り
翌日。木曜日。
昨夜の天城の電話。そのことがあったから、今日は俺に対する視線も増えるのかと思ったが、そんなことはなかった。
と言っても昨日と横ばい。
変化がないという感じ。
しかしーー
「……ん?」
下駄箱を見ると、1通の手紙が。
『放課後、屋上に』
というもの。
……天城か?
しかし、字が前回のものと違う気がした。
「……」
なんとなく嫌な予感がする。
その手紙をポケットに突っ込むと、嘆息を漏らしながら教室へと向かう。
天城に確認の連絡を入れようとも思ったが、もし違った時に困ると思い、やめておく。
そのまま、授業に集中できない状態が続き、気付けば放課後。
重い腰を上げて、屋上に向かうことにする。
鉄製の扉を開けると、少し蒸し暑い風とともに太陽の光が差し込んでくる。
屋上で待っていたのは、桐生と複数人の男子だった。
「……俺に何か用か?」
尋ねると、男子たちはクスクスと笑えるだけ。
なにこれ、帰っていい?
「先輩。いい加減にしてくださいよ」
桐生が代表して声をあげる。
「何をだ?」
「何をって、忠告したじゃないっすか。天城から手を引けって」
「いや、だからそもそも出してないって言ってるだろ」
なんでこいつはこうも日本語が理解できないんだ。
さすがにイラっとしてくるぞ。
「もういいんすよ、そういうの。だったらなんで天城は俺と付き合わないんすかねぇ?」
「……は?」
理論がぶっ飛んでてよくわからん。
どういうこっちゃ。
「先輩に手を出されて落ち込んだ天城を慰めたんすけどね、頑なに付き合わないんすよ、俺と」
「……」
「だから、先輩が脅してるんでしょ? やめてくださいよ、そういうの」
「……いや、単純にお前に魅力がないだけじゃないのか?」
思わず言ってしまう。
呆気にとられる桐生。
少しの間のあと、周囲の男子がケラケラ笑う。
「言われてんべ桐生くん」
「うける。さすがは人喰いタイガー! 怖いもの知らず」
大爆笑する周囲の男子。
その中心の桐生はどこかバツの悪そうな顔。
「……もう行っていいか?」
「……待てよコラ!」
がん! と地面をける桐生。
おーこわい。キレやすい高校生。
「決めた。お前ボコすわ。そしたら天城も目が覚めるだろ」
言って、桐生は一歩こちらに詰め寄る。
いや待て。なんでそうなる。
「人喰いタイガーをつぶせば、俺らも有名人っしょ!」
「虎狩りじゃー!」
周りの男子もノリノリだ。
え、なになに。何この展開。やめてよ。
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