閑話 後輩と、先輩



 先輩とのデート。


 ……いや、デート、なのだろうか?

 ……うん。考えてみたけど、やってることは間違いなくデートだ。

 ここはデートということにしておこう。



 改めて、先輩とのデートは思った以上に楽しかった。


 映画を見て、ゲーセン、カラオケ、ご飯。

 定番のコースだったけど、先輩が妙に気を使ってくれるから結構、居心地が良かった。


 まったく、なんで不良なんてやっているんだろうか。

 もったいない。普通にしてたら、結構モテると思うのに。

 顔も悪くないし。


「……」


 そんなことを考えながら、お風呂につかりスマホをいじる。

 趣味のネットサーフィン。


 新刊情報を漁りながら、欲しい本に目星をつけていく。


 あまり多くの本は買えないから、本当に欲しいものに絞る作業が、私には必要なのだ。


「……ん?」


 スマホが振動。

 どうやらクラスメイトから、メッセージが飛んできているようだ。


 グループラインじゃなくて、個別で。


『土曜日なにしてた??」


 というシンプルなもの。

 どういう意味かを少し考えるけど、私は普通に打ち返すことに。


『新宿に買い物に行ってたよー』


 と。

 別に嘘は言っていない。新宿には行っていたし、アイスだって買った。


 わざわざ先輩と一緒だった、なんて情報は話す必要がないだろう。


 メッセージを送った後、しばらくしても返信がない。


 なんだろう。何が聞きたかったんだろうか?


「……まいっか」


 思考を切り替え、私は再びネットの海に溺れることにした。




 このときは、

 まさかこんなことになるなんて、私は思ってもみなかったのだ。


 だから、もし時間を巻き戻せるなら、

 この時に戻って、違うメッセージを送りたいと思う。


 ……ううん。

 もしかしたら、もっといい方法があったのかもしれない。


 とにかく、私は願うのだ。


 もしタイムリープができるのであれば

 この楽しかった土曜日から、やり直したいと。




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