天城つぼみと、ライトノベル


 天城の書いた小説はいわゆる「学園ラブコメ」だった。


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 俺はこの学園を制するもの、暗黒の竜王を狩る者(ドラグネーター)

 表の名前は神童 神威という名前である。前世ではアルギニア王国の国王で、騎士で、勇者で、魔王であった。


 学園を守るために戦っているのだが、今日も彼女たちが離してくれない。

 おっと、彼女たちってのはこの学園のマドンナたちだ。7人いるマドンナたちは、全員俺のことが好きなのである。


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 そんな冒頭から始まるこの作品。

 簡単にあらすじをまとめると、


 ・神童くんという主人公を好きなマドンナ7人がいる

 ・全員神童のことが好きで、毎日デートを申し込んでくる

 ・しかし好きすぎるので、1対1のデートをしようとしても他の娘の邪魔が入る


 という内容。

 まだ完結はしておらずここからどういう展開になるのか、本当に予測がつかない物語だった。


 戦いが始まるのか。前世の謎は語られるのであろうか。

 

 しかしまあ、結構酷評しているものの「国王で勇者で魔王」とか、ギミック次第では面白くなりそうだから困る。

 漫画だと2巻くらいまでワクワクして、3巻で急展開打ち切り作品に有り得そうなやつだ。風呂敷広げすぎの作品。


 とまあそういう内容なのだが、この20,000文字程度を読んだ限りでは面白さのかけらも感じなかった。

 というか意味がわからなくて解読しきれなかった、というのが正しいのだろうか。


 そんな作品でも律儀に読むあたり、俺ってやっぱり不良じゃないよね。根が真面目な好青年だよね。


「ど、どこが面白くなかったですか?」


 頭でまとめていると、落ち込みモードを解除した天城が、改めて聞いてくる。


「そうだな。細かいことはきりがないからあれだけど……まずあれだな、リアリティがないな」

「り、リアリティ……ですか。なるほど、たしかに……」


 むむむ、と唸る天城。


「特にこのヒロインたちとのやり取りが、リアリティを微塵も感じない。だから没入感がないんじゃないか?」


 ラノベ編集者の母親を想像しながら、なんとなくそれっぽいことを言ってみる。

 天城は熱心に携帯でメモを取っていた。

 いや、そんなメモとられても困るんだが。


「……リアリティか……うーん……」


 再び唸った後、


「そうだ先輩!」


 と、何かを思いついたような天城。

 ぱぁっと笑顔全開で、


「先輩、取材に付き合ってもらえませんか!」


 と、そんなことを言うのであった。

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