だって、リセットされるんです
「それで、幼いころから探しているのに、お前はまだその金印を見つけられていないのだな」
だから、毎晩リセットされるから、遠くへ行けないんですってば、とエルダーの言葉にアイリーンは思う。
エルダーは目を閉じ考える。
「目覚めた場所から動かず、その夜、そこで眠れば、冥府の世界でも場所は移動せず、先へ進めるのではないか?」
「そうなんですけど。
目覚めるのは大抵、街道とかなので。
あと、人の家の中とか」
エルダーは沈黙する。
「ただ、私、この城まで引っ越してきましたので。
今は前とは、全然違う場所に下りてるはずなんですけど。
冥府って、ずっと大きな川があるだけなので、どこに下りても景色は一緒なんですよね~」
そうアイリーンは語った。
「川を渡れないのか」
「たまに、渡し守りのカロンがやってきますよ。
まあ、私は基本、生者ですし、渡し賃を持っていないので。
カロンは私が彼の船の横を走っているのを面白おかしく眺めているだけなんですけどね」
「……金を持って寝たらどうだ。
ああいや、川を渡るとほんとうに死んでしまうのかもしれんな」
「王様」
と呼びかけると、なんだ? とエルダーがこちらを見る。
「あの、こんな話を信じてくださってありがとうございます」
「いや……信じるもなにも、熱い夜を過ごして目を覚ましたら、お前は死んでおるし、消えるし。
私の心の中は大変な騒ぎなのだが、まあ、信じざるを得ないだろう。
さすが王様。
動じないんだな、とアイリーンは思っていたが。
単に、アイリーンと出会うまでに騒ぎすぎて、魂が抜けている状態なだけだった。
「しかし、そもそも、冥府にそんな簡単に出たり入ったりできるものなのか?」
そうエルダーが言うと、イワンが横から言ってくる。
「王よ。そういえば、この辺りには、冥府に通じる洞穴の伝承があるそうですよ。
イニシエの時代には、意外に簡単に行ったり来たりできたのかもしれませんね。
姫はイニシエの王家の血筋ですし。
なにかそういう力が残っているのやも」
「私としても、戦いを避けるため。
ぜひとも、金印を探し出して欲しいところだが。
お前に無理をさせるのもな」
「……王様、やさしいお言葉、ありがとうございます」
とアイリーンは感激する。
「今の状況を分析するためにも、ちょっと時間をとって、そのラナシュ王とやらに会いに行ってみようか」
死ねないのなら、今も牢獄にいるのだろう? とエルダーは言う。
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