私は眠るたび、死んでは生き返っているのです
「実は、私は眠るたび、死んでは生き返っているのです」
中庭で爽やかに朝食をとりながら、まったく爽やかでない話をアイリーンははじめた。
「生きたまま冥府に魂が
肉体というのは、魂に付属しているものらしく。
目を覚ましたら、私の魂がいる位置に、バンッと肉体の方が引き戻されてしまうんです」
「それでいろんなところに朝現れては、街道を走って戻ってきたりしているのだな」
はあ、王様がいらしたとき、必ず城にいないといけないと言われましたのでね、
とアイリーンは、焼きたてのパンにはちみつをたっぷりかけながら思う。
まだ霧の残る冷たい空気に、パンの香りとはちみつの甘い香りが混ざって広がっていた。
「ということはですよ。
冥府でどれだけ移動してても、起きてる間に、元の位置に帰ってしまうので。
その晩寝て、冥府に下りても、また一からスタートになってしまうわけです。
それで、何年経っても、冥府の探索が進んでないんですよね」
「冥府の探索?
お前は冥府でなにかを探しているのか?」
「実は子供のころ、人に頼まれまして」
アイリーンは幼少期の思い出を語り出す。
「幼ない折、当時から出入り自由だった王宮をウロウロしていて、地下の回廊に入り込んだんです。
突き当たりに錆びた扉があったので、引っ張ってみると、朽ちていた錠が落ちて」
「引っ張ってみるな……」
とエルダーが眉をひそめる。
「その先に進むと、使われていない感じの地下牢があったのです」
アイリーンは今でもその日のことをよく思い出す。
自分が呪われた日だからだ。
一番突き当たりにある牢。
その錆びた鉄の格子の向こうに、ボロボロのローブを頭から被った凛々しい体格の若い男がいた。
「我が血を引く娘よ。
汝に使命を与えよう」
地下の廊下に響く低い声で男はそう言った。
「結構です」
「使命を与えよう」
「結構です」
その回想を聞いていたエルダーに、
「お前は昔から無礼だったのだな」
と言われる。
いやいや、そんな怪しい人になんか命じられたら、なにが起こるかわからないではないですか、とアイリーンは思う。
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