第2話 再会

それから10年がたった。


私は大学も卒業しIT関係の会社のデザイン科へ就職して、はや1年がすぎた。


仕事は毎日忙しいけど、それなりになんとか軌道にのれて頑張っている。

でもやはり人手不足もあり残業も、正直増えてきてはいる。


そんなとき、同じ関連会社から1人優秀な人材が派遣されることになったらしい。


毎朝の朝礼で部長が1人の男性社員を連れて入ってきた。


「えー、みんな紹介する。今日からうちで働いてくれることになった雪村くんだ。彼はいくつも案件を担当している我が社でもとても優秀な社員だ。きっとみんなをサポートしてくれるだろう。」


私は目を…耳を…疑った。

彼ってまさか……あの雪村和樹?


「えー、雪村和樹です。僕はみなさんと楽しく仕事ができれば最高だと思っています。どうぞよろしくお願いします。」


と簡単にでも笑顔で挨拶した。


笑顔で迎える社員の拍手の中、私だけがきょとんとした表情で立ち尽くしていた。

そして、その笑顔は10年前の私をいつも励ましてくれていた笑顔そのままだったと実感していた。


ただ一つ違ったのは…


身長が私よりずっと高くなっていること!うそでしょー!

190㎝はあろうかというくらいに大きくなってる!


ってなことを考えていると朝礼を解散し、皆が各席に戻っている中から部長と和樹が私の方へやってきた。そしてボーっとしている私に部長が喝を入れるかのように声を荒げた。


「おい、冬馬!なにボーっとしてるんだ!シャキッとしろ!」


その言葉に私はハッと我に返った。


「は、はい。すいません。」


と部長に答えたその横で和樹がくすりと笑っている。


「冬馬、お前集中力が足らねえんじゃないか。もっとしっかりしろよ。ところで雪村の席だがお前の隣だから、いろいろと彼に教えてやってくれ。お前もデザイン担当として彼に聞いたらいい。じゃよろしくな。」


といい足早に部長はフロアをあとにした。


私は恐る恐る見上げるように和樹の顔を見る。

和樹は私に視線をまっすぐに向けながらにっこりと微笑んでいる。


やっぱりあの時の和樹だ。

私は自分の顔が自然とほころんでいくのが分かった。


「何にやにやしてんだよ!」


「えっ!だって…。」


私は言葉につまる。

フッとわらって和樹がいう。


「元気だったか?利子。」


そのどこか落ち着き払った和樹のやわらかな表情に私の緊張は徐々にほぐれていく。


「うん!」


和樹のその言葉に…その笑顔に…私はどこか懐かしさと安心感を感じていた。


でも、こんなに背が伸びてたなんて!しかも妙に落ち着いて大人っぽくなっちゃって反則だよー。


あれこれ考えたかったけど、とにかく今は仕事仕事!と自分に言い聞かせた。


その後は和樹への対応と自分の仕事で今日1日…訳もわからずヘトヘトに過ぎていった。

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