怒りの神速攻撃

「ぐああぁぁっ!!」


 凄まじい衝撃と共に吹き飛ばされたカイだったが、なんとか意識を保っていたもののかなりのダメージを受けてしまっていた。


(このままだと……死ぬ!)


 そんな考えが頭を過った瞬間、リーヴがすぐに駆け寄ってきた。


「おい! 大丈夫か!?」


 心配そうに声をかけてくるリーヴに対して、カイはこう答えた。


「はい……なんとか……」


 そう言うとカイはよろよろと立ち上がったが、その足取りはとても弱々しく、今にも倒れそうな状態であった。

 それを見たリーヴはすぐに回復魔法を使ってくれたのだが、それでもまだ傷が癒えることはなかった。


「クソッ! なんで治らねぇんだ!」


 焦りの表情を浮かべるリーヴに対して、カイはこう答えた。


「おそらくですが……なんらかの呪いがかけられているかもしれません」


「なるほど……そういうことか」


 とリーヴは言うと、すぐに行動に移した。


 まずは悪魔を倒すことを優先するため、カイを安全な場所まで移動させようと考えたのだ。


「おい! 俺の背中に乗れ!」


 と言ってリーヴは背中をカイに向けた。

 カイはゆっくりと近づき、おんぶされるような形でリーヴの背中に体を預けた。


「よし……行くぞ!」


 そう言うとリーヴは走り出した。

 すると、カイの体に振動が伝わり、同時に痛みが襲ってきた。

 しかし、今はそんなことを気にしている暇はないと自分に言い聞かせて我慢することにした。


 そしてしばらくの間走り続けていると、ようやくダンジョンの入り口近くまで到着した。


 しかし、ここで問題が発生した。


 外に出るためには階段を上らなくてはいけないのだが、その階段の前にはモンスターが立ち塞がっていたのである。

 これにはさすがのリーヴも焦りを感じたが、それでも諦めることはしなかった。


「さて、どうしたものか……」


 とリーヴが言った瞬間、モンスターは攻撃を仕掛けてきた。

 リーヴは咄嗟に攻撃を躱すと、そのまま相手の腕を斬りつけた。

 しかし、予想以上に攻撃が効いていなかったらしく、すぐに反撃されてしまった。


「ぐあっ!」


「先生!」


 リーヴはなんとか直撃を避けることはできたものの、かなりのダメージを受けてしまった。

 そのため、動きが鈍くなっている隙を狙ってモンスターは追撃を仕掛けてきたのだが、リーヴは咄嵯の判断で回避することに成功した。


 その後、カイを背負っているため反撃することはできないと判断して一旦距離を取ることにした。


(クソッ! どうすればいいんだ?)


 と思ったが、すぐに頭を切り替えて作戦を考えることにした。


(とにかく今はあいつを倒すことだけに集中しよう)


 そう決意したリーヴは再びモンスターに向かって攻撃を仕掛けていった。

 今度は先ほどよりも素早く動き、敵の攻撃をしっかり躱した。

 その様子はまるで踊っているかのようで美しくもあったのだが、やはりダメージは大きいらしく、時折苦しそうな表情を浮かべていた。


「先生! あまり無理をしないでください!」


 カイが叫ぶと、それに応えるようにリーヴは叫んだ。


「うるせえ! 黙ってろ!!」


 と強く怒鳴るリーヴだったが、彼の体は既に限界を迎えているようだった。

 その証拠に彼の動きは段々と鈍くなっており、モンスターの攻撃を躱せるのも時間の問題だった。

 それでも諦めずに必死に立ち向かっていくその姿は、まるで物語に登場する勇者のようであったが、それも長くは続かなかった。


 ついに体の限界を迎えたリーヴは、モンスターの攻撃を躱せずに直撃してしまい、そのまま壁に叩きつけられてしまった。


「ぐっ……!」


 その衝撃により口から血を吐き出してしまったリーヴは、そのまま倒れ伏してしまった。


 それを見たカイは慌てて回復魔法を使い始めた。

 しかし、リーヴの傷は思ったよりも深く、なかなか治らなかった。


「先生! しっかり!」


 とカイが声をかけると、リーヴは弱々しく答えた。


「逃げろ……」


(くそっ……!)


 カイは心の中でそう呟いた後、ゆっくりと立ち上がった。

 そして、こちらに向かってくるモンスターに対して剣を構えながらこう言った。


「今度は僕の番だ!!」


 そう言うとカイは勢いよく飛び出していった。

 カイはリーヴの頑張りを無駄にしないためにも絶対に勝つという強い意志を持って戦った。

 その思いに応えたかのように彼の体は、普段よりも素早く動くことができていた。

 そして相手の攻撃を躱しながら反撃を繰り返し、少しずつではあるがダメージを与えていった。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 気合いの入った声と共に剣を振り下ろすと、ついにモンスターの左腕を切り落とすことに成功した。

 それを見たカイは喜びを隠せなかったようでガッツポーズを取った後、すぐに次の攻撃に移った。

 今度は右足を狙って剣を振るったが、そう簡単にはいかず躱されてしまった。


 その後も何度も攻撃を仕掛けたが、どれも決定打になることはなく、むしろ相手の反撃によって返り討ちに遭ってしまうという場面もあった。

 その度にカイは傷を負っていったが、諦めることなく立ち向かった。


 すると、背後からカイの肩を何者かが叩いた。


 カイが振り返ると、そこにいたのは──先程まで深い傷を負っていたリーヴだった。 


「先生!?」


「逃げろと言ったはずだぞ。新人……」


 すると、カイは真剣な表情でリーヴにこう言った。


「先生を置いて逃げるほど、僕は臆病な人間じゃありません!」


 カイの言葉を聞いたリーヴは微かに微笑んだ。


「フッ。見直したぞ……しんじ――」


 するとその瞬間、モンスターの強烈な一撃によってカイは吹き飛ばされてしまった。

 そして、壁に激突した彼はそのまま意識を失ってしまった。


 その様子を見たリーヴはゆっくりとモンスターの方へ近づきながら、モンスターを睨みつけた。

 そんな視線に臆することなく襲いかかってきたモンスターに対して、リーヴは拳を突き出すと、相手の顔面に直撃させた。

 その一撃でモンスターが怯んだ隙を狙って、今度は蹴りを入れた。


 その後すぐに剣を構えると、目にも止まらぬ速さで連続攻撃を繰り出していった。


「グオォォォォォォォ!!」


 その攻撃にモンスターは、なすすべなく倒れた。


「ハァ……」


 と一息ついた後、リーヴはカイの元へ駆け寄った。

 そして回復魔法をかけると、すぐにカイは意識を取り戻した。


(よかった……)


 そう思いながらも、リーヴはカイにこう言った。


「おい新人! さっさと起きろ!」


 その言葉に反応したのか、カイはすぐに起き上がった。


 そして、リーヴに謝った。


「すみません! 僕が油断したせいで……!」


 申し訳なさそうに謝るカイに対して、リーヴはこう言った。


「気にするな。それよりも今は……目の前の敵を倒すことだけ考えろ」


 その言葉を聞いたカイはすぐに立ち上がると、武器を構え直した。

 彼らの目の前にいるのは、カイに呪いをかけた全身が紫色で染まっている巨大なモンスター……悪魔である。

 そんな悪魔に対して、彼らは連携しながら戦い始めた。

 お互いの動きに合わせながら確実に攻撃を当てていき……遂に決着がつく時が来た。


 最後の一撃を決めるためにリーヴは走り出すと、その勢いのまま強烈な一撃を喰らわせた。

 強烈な一撃を喰らった悪魔はバタンと倒れ、カイにかかっていた呪いは解かれた。


 こうして彼らは悪魔を討伐することに成功したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る