ダンジョンに潜む悪魔

 現在時刻は22時を回ったところである。


 カイは自分の部屋に戻り、ベッドの上に横になって自分のステータスカードを見つめていた。


「バーサーカー……か」


 カイは小さく呟くと、そのまま眠りについた。


◆◆◆◆


 翌朝、カイは身支度を整えていると、彼の部屋のドアがノックされたかと思うと、外から声が聞こえてきた。


「おーい……起きてるか?」


 カイは慌ててドアを開けると、そこには予想通りの人物が立っていた。


「リーヴ先生……」


 彼はいつもの装備を身に着けており、カイに向かってこう言ってきたのである。


「よっ、新人。今日の訓練だが……今から俺と一緒にダンジョンに行ってもらう」


 カイはその言葉を聞いた瞬間、固まってしまった。


(え? 今なんて言ったんだ?)


「あの……すみません。もう一度言ってもらえますか?」


 とカイが言うと、リーヴは呆れながらこう答えた。


「はぁ~……仕方ないなぁ」


 リーヴはそう言うと、少し間を置いてからこう言った。


「だから、今から俺と一緒にダンジョンに行ってもらうって言ったんだ」


 その言葉にカイはさらに驚いてしまったのだが、なんとか平静を装って質問した。


「えっと……どうしてですか?」


 すると、リーヴはこう答えた。


「それはお前がどれだけ戦えるかを確認するためだ」


(え?)


 カイはますます混乱してしまったのだが、リーヴは続けてこう言った。


「とにかく時間がないから早く準備をしろ」


 リーヴはそう言ってカイの前から去ってしまった。

 そして取り残されたカイはしばらくの間呆然としていたが、すぐに我に返ると急いで準備を始めたのだった。


 カイは急いで身支度を整えた後、リーヴと一緒に街の外れにあるダンジョンへと向かうことになったのだが……ここで一つ問題が発生したのだ。


 それは移動手段についてである。


 リーヴ曰くどうやら馬車での移動は不可能らしく、徒歩で向かうしかないとのことだった。

 それを聞いたカイは少し落胆していたが、それでも諦めずに頑張ってみることにした。


(うぅ……徒歩かぁ……結構遠いんだろうなぁ……)


 そんなことを考えながら歩いているうちに目的の場所に到着した。


 ダンジョンの入り口は岩山の中腹にぽっかりと開いた洞窟のような形をしており、その中に入れば地下に続く下り坂になっているようだ。カイ達はそのまま中に進み、しばらく進むと大きな扉があった。


 どうやらここから先が本当の目的地らしいが、その前にここで休憩を取ることにした。というのも長時間の移動で疲れてしまったため、一度体を休める必要があるからだ。


 カイ達は持ってきた荷物の中から水や食料を取り出して食事を摂ることにした。

 ちなみにメニューは、リーヴが作ってくれたサンドウィッチである。


「ゆっくり食えよ」


「ありがとうございます」


 と言って受け取った後、カイはまず最初に一口食べてみたのだが……その瞬間あまりの美味しさに感動してしまった。


 カイは思わず目を輝かせながらバクバク食べ進めていたのだが、その様子を見ていたリーヴは嬉しそうに微笑みながらこう言った。


「ゆっくり食わねぇとむせるぞ。新人」


(あ、そうか!)


 その言葉を聞いた瞬間、カイは自分の行動が恥ずかしくなったのか顔を赤らめてしまった。

 しかしそれでも食べる手を休めることなくパンや具材を次々と口に運んでいく様子は、まるでお腹を空かせた子供のようであった。


 しばらくするとお腹もいっぱいになったのか、カイは手や口をナプキンで拭くと満足そうに立ち上がった。


 すると、それを見たリーヴが声をかけた。


「満腹になったか?」


「はい! 先生が作ってくれたサンドウィッチが美味しすぎました!」


「フッ。そいつはよかった」


 リーヴは嬉しそうに返事をした後、続けてこう言った。


「よし、そろそろ行くか」


 その言葉にカイは力強く頷くと、リーヴは大きな扉を開けた。

 扉の向こう側は薄暗くジメッとした空気が漂っていたが、カイ達は臆することなく進んでいくことにした。


 すると、すぐにモンスター達が襲いかかってきた。


 緑色の小鬼のようなモンスターや、蜘蛛のモンスターなど、様々な種類のモンスターがいるようだが、カイ達はそれらのモンスターの攻撃を上手く躱しながら討伐した。


「おらっ!」


 リーヴは掛け声と共に次々と襲いかかってくるモンスター達を薙ぎ払うかのように攻撃している。

 その動きはまるで踊っているかのような美しい動きで、見る者を魅了するような迫力があった。


 一方カイの方はというと……彼は無我夢中で剣を振っていた。

 その一撃一撃は素早く、正確であり、相手の急所を狙っていた。

 また、時にはフェイントも混ぜており相手の動きを翻弄していた。


 そんな二人のコンビネーションによってモンスター達は次々と倒されていき、気がつけば彼らはモンスターの大群を全滅させていた。


「よし、やったな」


 リーヴはカイに向かってそう言うと、彼は嬉しそうに返事をした。


「はい!」


 すると次の瞬間、突如として彼らの目の前に魔法陣が現れたかと思うと、そこから巨大なモンスターが現れた。その外見はまさに悪魔そのもので、全身が紫色に染まっていた。そして大きな口から覗かせた鋭い牙からは涎のようなものが滴っており、その目は狂気に満ち溢れていた。


 あまりの迫力に思わず後ずさりしてしまったカイだったが、そんな様子などお構いなしといった様子で悪魔は襲い掛かってきた。

 カイは慌てて剣を構えると、相手の攻撃を防ごうとしたのだが……残念ながら力の差があり過ぎたようだ。

 呆気なく弾き飛ばされてしまい、カイは地面に叩きつけられてしまった。


「ぐはっ!」


 背中に強烈な痛みが走り、口から血を吐き出してしまったカイだったが、それでも立ち上がろうとした。

 しかし、体に力が入らずカイは立ち上がることができなかった。

 その様子を見たリーヴはすぐに助けに入ろうとしたのだが、悪魔の方が早かった。


 悪魔は再びカイに向けて拳を振り落とすと、カイは躱すことができずに直撃してしまった。

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