謝罪と任命
それから1週間以上が過ぎたある日のこと。
「あ、あの……! 本当に申し訳ございませんでした!!」
ギルド長室に入った俺は、思いっきり頭を下げながらギルド長に謝った。
俺がギルド長に謝っている理由は、一昨日のダンジョン飯の配信で、ギルド長の下品な物真似をしたり、ギルド長が密かに隠しているエロ本の場所を視聴者に暴露してしまったからだ。
(まさかあそこまで怒るとは思ってなかったし予想外だったからなぁ……。あ〜あ、完全にギルド長から嫌われたよなぁ……俺)
「ああ、気にしなくていいぞ?」
(あれ? 意外と……怒ってない? というかなんか笑いを堪えてるように見えるんだけど……気のせいかな? いやでもそんなはずは……)
「あの~、ギルド長……一応聞きますが、怒ってますよね?」
「え? いや、全然怒ってないけど? 逆になんでそう思うわけ?」
(……逆になんで怒ってないんだよ!? あんた、下品な物真似とエロ本の場所を全世界に暴露されたんだぞ! それなのに怒ってないのかよ!? もうこの人本当になんなの!? なんか怖いんですけど!!)
「そ、そうですか……。ギルド長が怒ってないならよかったです。……ところでギルド長、俺はこれからどうすればいいんですか?」
「あ〜、それなら安心しろ。お前には明日からとあることをしてもらう」
(え? とあること? なんだろう? なんか嫌な予感がするんだけど……)
「はい。なんでしょうか?」
ギルド長はティーカップに入った紅茶をすすって一息ついた。
「リーヴ・レクトル、お前には明日から新人冒険者の育成をしてもらう」
「新人冒険者の……育成……ですか……」
(お、おうふ……そうきましたか……。まじかぁ〜……正直すっごくめんどくてやりたくないんだけどぉ……。なんで俺が新人冒険者の育成をしなきゃいけないんだよ)
「えっと……ギルド長、どうして俺なんですか? もっと他に適任者がいると思うんですが……」
「いや、お前が1番適任だと思うぞ?」
「1番不適任の間違いじゃないですか?」
「いやいや、そんなことないぞ? お前ならきっといい育成ができるはずだ」
(なんでそんなに自信満々に言うんだこの人は……。そもそも俺、誰かを育成したことなんて一度もないんだけどなぁ……。それに新人冒険者の育成とかクソめんどくせぇだろ。はぁ……嫌すぎるんだけど……)
「ギルド長、どうして俺が新人冒険者の育成に適任だと思うんですか? 俺にはその理由がわからないのですが……」
「ん? そんなの決まってるだろ? お前は優しいからだ」
(……は? いや、だからなんでそれが理由になるのかを聞いてるんだよ! 意味わかんねぇし、理由になってないんだよ! おかしいだろ!!)
「あの、その発言は矛盾してますよギルド長。俺は優しくなんかないですから……」
するとギルド長はため息をついた。
「あのなぁリーヴ・レクトル、私はお前に優しくないやつを見たことがないぞ。お前はいっつも困っている人がいたら助けてるだろ? そしてそれが理由でお前に助けられたってやつが何人もいる。そんなお前だからこそ新人冒険者の育成に適任だと思ったんだ」
「な、なるほど……。そうだったんですね……」
(まさかそんな風に思われていたとは知らなかったなぁ……。ギルド長って意外と俺のことを見てくれてたんだな。なんか嬉しいかも……! でもまぁ確かに、俺は困っている人がいたら放っておけない性格だし、困ってるやつがいたら俺が助けてあげないと気が済まないタイプなんだよな。だからなのか、俺に助けられたやつらはみんな俺に感謝してくれたりするんだよなぁ〜)
俺はしばらく考えると、決断した。
「わかりましたよ……。やりますよ! 新人冒険者の育成!」
俺がそう言うと、ギルド長はティーカップに残っていた紅茶を飲み干し、立ち上がった。
「決まりだな」
(あ〜あ、明日から大変だなぁ……)
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