第47話 私の戦い
起きよ。
起きるのだ、娘よ。
お前が眠っていては堕とせぬ。
お前が眠っていては領土を広げられぬ。
私は、私からの呼びかけで目を覚ました。
ぼぉっと座っていただけの体が立ち上がる。
「起きたかルシアよ。さあ、出番だ。自由に暴れてこい」
「…………」
寝覚めにジルコワルが居た。気分が悪い。
「参りましょう勇者様。ちょうど良い相手が出てまいりました」
アイトラが私を促す。アイトラは
私も同じく
私も同じく防護魔法をかける。
「オーゼは
「そんなことは知っている。その卑しい口を閉じよ……」
私がそう言うと、アイトラは怒りの見え隠れする顔で頭を下げる。
◇◇◇◇◇
「では、私は先に参りますので後ほど」
戦場に入るとそう言ってアイトラは離れていった。
「
半端に生じてしまった魔力が、
何故だ? どうして間違えた?
――あたしでも間違えることがあるのね。
黙れ小娘。
私が私に雑言を吐く。
再び私は
――ぷっ。また間違えた。
黙れと言っている!
「
私は次に
「
さらには
――バカなあたしね。
貴様か! 貴様が邪魔をしているのか!
とうとう私は私を貴様呼ばわりし始めた。
私も口が汚くなったと思うけれど、貴様なんて使ったことは無い。
――あたしは
よかろう。ではその才能を直接知らしめて見せようぞ。
私は再び
◇◇◇◇◇
「ルシアか!?」
鎧に身を包んだ私だったけれど、兄を見つけると兜を脱ぎ棄てた。
髪の毛の一本二本が兜に引っかかってすごく痛いのに
兄は
私も兄に合わせて
兄が生きているという事は知っていた。
私は嬉しくて涙を流したかったけれど、
ごめんなさい――そう伝えたかった。
そんな私の想いなど気にもせず、
左手では
私がいつかやってみせたように、
火球は兄の
「ルシア、やめるんだ。手を止めてオレを見ろ」
兄は歩み寄りながら語りかけてきた。魔術師にとって戦闘中の会話などもっての外。
それなのに兄は語りかけてきた。
語りかけつつも詠唱省略と両手の
そんなことまでできるのか、厄介な。
火球は兄の障壁を破壊する。
何故だ? 障壁を貫いているのになぜあの男は平然としている!?
そう、障壁が破壊されればいくらか威力が衰えるとはいえ、無傷では居られない。それなのに兄は全くの無傷だった。私から見てもそれはおかしい。
くそっ、貴様も知らないのか。
また悪態をつく
――だいたい、兄さまの考えにあたしが及ぶわけないじゃない。
素直な気持ちだった。
ただ、いずれにせよ兄の魔力は昔に比べて少なくなってしまった。
だからいずれ、私との魔法の打ち合いが始まれば兄の魔力は底をつく。
ククッ。そうか、いいことを聞かせてもらった。
――ククッ――だなんて、三下の悪役みたい。
黙れ!
「いいかルシア。お前は今、
――ミルーシャ……ミルーシャ……ミルーシャ……だれだっけ……。
その記憶は封じさせてもらった。あの女は厄介だ。あと僅かで堕ちていたというのに……。
――ミルーシャ……だれ?
その間にも、
兄は障壁の強さを上げたのか、何度目かの火球を完全に防いだ。
この娘の火球を完全に止めるだと!?
――さすが兄さまね。
黙れ!
兄はさらに障壁を重ねた。そしてついに――。
「
なんだ今のは!?
――バカね。
――兄さまは火球を使えないけれど呪文は知ってるわ。当たり前じゃない、兄さまだもの!
しかし兄は
これもダメか!
――あきらめたら?
当然のように兄は
――
だまれだまれ!
そうか、ならば
頭の回転の速さは呪文詠唱の速さに直結する。
――が、兄はさらにその詠唱時間を縮めた火球を
次々と消される火球。
私の頭が熱を帯びてきているのがわかる。どんどん魔力を消費している。
兄はついてこられるのだろうか!?
なぜだ、なぜ奴の魔力が尽きぬ!?
確かに、こちらもかなりの魔力を消費していた。なのに兄は全く衰えない。どうして?
貴様が言ったのだろうが!
――あたしに当たられても困るんだけど……。
ただそれでも
何か、……何か私の頭の回転を止める
――あ。
やめろおぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!
私の
それは私の恋人――そう、ロージフ! 思い出した! ロージフがくれた甘い思い出。
ロージフとのひとときは何も考えられなかった。私は最大限、それに頭を使った。
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