6話 俺の推理を聞いてくれ

 俺は全ての事象じしょう合点がてんがいった。不思議そうな顔で見つめるあかりに俺は続ける。


「そうか、そう言うことだったのか! ヤツめ、考えたな!」


 すぐに答えを言ってもいいのだが、こう言うことは少しタメてから言った方がありがたみが増す。あかりが俺に充分すぎるほど興味を持った瞬間にタネ明かしをする、それが一番効果的なはず! 俺はチラチラと彼女の様子を覗う。


 するとクリクリとした目を輝かせるあかり。


「え!? わかったの!?」

「もちろんさ!」


―――よしよし、計算通りだ。


「すごい! 一郎、探偵みたいだね!」

「まあ、それほどでもないけどね。なんかさ、今、急に降ってきたって言うかさ」

「わあ! 本当にひらめいたんだね!」


 大きな目で俺を見つめるあかり。間近で、しかもそんな目で見つめられるとテレると言うか何と言うか・・・。とにかく、気分はサイコー! 俺はその勢いのまま、その先を知りたそうにしている彼女に向かってその推理を披露する。


「まずはこのポストだ。ヤツは向こうから信号を渡ってきてこのポストの前を通った。そうだろ!」

「うん、確かに通ったよね」

「その時、ヤツはこのポストにあるモノを入れたのさ」

「あるモノ?」

「そう、それがチケットだ! ヤツはあらかじめ用意しておいた自分宛の封筒にチケットを入れると、このポストに投げ込んだんだ」


 俺は得意になって眼下のあかりを見る。我ながら見事な推理だ。きっとこれを機に、あかりの俺を見る目も変るはず。没個性の俺だってやる時はやるのさ!


 すると一瞬、顔を輝かせていたあかりだったが、そのポストを見るとすぐに質問してくる。


「でもさ、今日の集荷は午後四時が最後って書いてあるよ」


 赤いポストに貼られた『取集時間』の貼紙。確かに平日である今日の最終集荷は午後四時となっている。小嶋がココを通ったのは午後四時半近かったはず。


 しかしそんなことはどうでも良い。まだ回収されずにこの中に入っているだけの話だ。俺はあかりの指摘に怯むことなく言葉を返す。


「ああ、今日の集荷には間に合わなかったようだな。でも明日の最初の集荷・・・ええっと、休日は午前十時が最初だから、その便で集荷されるはず」


 明日は文化の日。なので休日用の集荷時間になるだろう。貼紙によると最初の集荷は午前十時となっている。市内便なら翌日には宛先の住所に配達されるはずだ。つまり明後日にはヤツの手元に届くに違いない。


 俺はさもうらめしそうに赤いポストをポンポンと叩く。


「クソー、このポストさえ開けられれば決定的証拠を掴めるんだけどな」そう悔しそうに盛大にグチってみせる。


「でもさ」

 そんな俺に体育会系少女は、少し首を傾げながらつぶやく。


「今って郵便屋さん、祝日って休みだよね」

「へっ?」

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