第51話
やぶさかの剣
装備したものは、たとえどんな依頼でも「まあ、頼りにしていただける分にはやぶさかではないが」と言って引き受けてしまう。そして戦闘になると、「やぶさかではない!やぶさかではないぞ!」と喚きながら敵を攻撃するようになる。
一度抜刀したら最後、戦闘が終わるまで呪いの効果が続くのだ。そしてこの呪われた剣はどこにあるのかというと、元の持ち主の死体と必ず一緒に転がっているはずだとサティアンはいう。
呪われた武具である。この呪いの効果を抑えるのが『オリハルコンの鞘』である。納刀している間は正気を保っていられるのだ。
「それでどこにあるのか、見当はついているんですか?」
サティアンは袋から地図を出して机に広げた。この周辺の町の地図だ。俺らが宿泊している宿、今いるカジノ、そして鍛冶屋ベルクートも描いてある。何気にベルクートの横に有限会社と添えてあるのがちょっぴり悲しい。
「候補はいくつかあります。」
・無限沸きトンネル・・・雑魚モンスターの巣窟
・焔火山・・・休火山
・鍛冶屋アルテミス(プレミアム企業)
・麦酒の大海原・・・老舗の酒造
以上の四か所が丸印で囲ってある。ほかにもいろいろロケーションがありそうな雰囲気だが今はこの四か所から選ぶしかない。
サティアンはどうしましょうかねとつぶやき、それぞれの場所について説明してくれた。
以下はカジノの休憩スペースにある本棚から拝借した貴重な資料から抜粋したものである。
無限沸きトンネルは燃料になる天然黒石の発掘を盛んに行っていた場所である。無限に湧き出る天然黒石は発掘者たちの労働意欲と経済力を満たすには十分すぎるものであった。そしてトンネルの中には国境を越えぶち抜いてしまった箇所がいくつかあると噂されている。もし発見できれば隣国から貿易ルートを確保できるわけだが、このトンネル、やたらモンスターとのエンカウント率が高い。そこで発掘者たちの中で、やぶさかの剣を装備させたものを囮とし、通り抜けられるか試していたとかいないとか、取材班は取材中、何者かにおしりをかじられそうになり、これ以上の調査は断念せざる負えません。知ったか乙兵衛著
「・・・どうして今資料を読み上げるのですか?」
サティアンは遠回しにトンネルに行きたがっていることをアピールしている。
「最近腕が鈍ってるか確認したくてですね」
サティアンの瞳が昏い、この人雑魚モンスター相手に憂さ晴らしする気だ。怖。
「あ、何?こん中から選ぶわけ?」
岬がドロンとした目で地図を俺の肩越しに覗きこんできた。酒臭い。
「こんなん麦酒の大海原一択っしょ!」
岬は自信満々で宣言した。
「どうしてそう思うのですか?」
「お酒を飲みまーす!お酒を飲む人に悪い人はいねぇから!」
とても会議になりそうにない空気を察した徳三が眠たそうに声を上げた。
「・・・では多数決で決めようぜ」
岬
「酒が欲しい!」
サティアン
「魔物と戦いたい!」
徳三
「新しい世界を見たい!」
俺
「最大手メーカーの現場が見たい!」
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