第50話 作戦会議

「え?何のことです?」


俺はしらばっくれる


「へーそんな感じなんだ」


ジロジロと見てくる。店長らしき巨体の男が店の外へと出てきた。俺とミサ姉のすぐ目の前を素通りしていく。店長は最近の若いやつはすぐにいなくなるブツブツブツ・・・と聞こえてくる。通り過ぎる瞬間、ポマードの匂いが鼻についた。その後からサティアンと匿ちゃんが出てくる。


「話がさっぱり見えないんですけど?」


俺はさらにすっとぼける。サティアンと匿ちゃんが追い付いてきた。


開口一番で


「なあ、屋台でなんか食おうぜ」


と匿ちゃんがナイスな提案をしてきた


「お、いいっすね、俺屋台とかしばらく使ったことないもんで」


このチャンスを生かさない手はない、このまま押し切れ


「たこ焼き、オウバン焼き、焼きそば、りんご飴・・・」


ブツブツと俺は独り言を唱える


「いきましょいきましょう」


俺はピュアなこどものようにはしゃぎまくる


「腹ごしらえしとくのも悪くないでしょ」


サティアンにそういうと、まあそうかもしれませんねとのこと


屋台の前のベンチに4人横並びで腰を掛ける


目の前には鉄板が敷かれている


油がしっかり馴染んで、これならいい味の料理が完成しそうだ


「いらっしゃい・・何に・・いたしましょうか」


ゴマ塩頭の初老のおじさんが俺たち4人を品定めでもするかのように見てくる


メニュー表を眺めると、見たことのない文字が並んでいる


・・・あれ・・・俺はいつから文字が読めなくなったんだ?


「・・・・おい、何にするの?」


「ピぃちゃん?」


ハッとして顔を上げると、全員が俺を見ている


「え?みんなもう決めたの?」


「みんな注文済みましたよ」


サティアンは訝しげに答える


「あ・・・じゃあ同じやつで」


「あいよっ」


鉄板の上に具材が並べられる。ジュージューと小気味よい油のはじける音を立て、さらに食欲をそそる匂いが辺りに立ちこめる。


「酒頼むわ」


「あ、私も」


匿ちゃんとミサ姉が注文を出そうとしたらサティアンが無言の圧力でそれを阻止する


「お待ちどうさん」


料理が並べられる。口に運んだが何故か味がしない。この料理も何故か名前が思い出せない。・・・俺、どこか具合が悪いのか?


「ちょっと、ごめんよ」


不意に炎上系の若者がゴマ塩頭に向かって俺の剣技を調理に使ってみてくれないかなどと言い出した


「ロイヤルジビエ料理には火力が不可欠だろう」


「そりゃそうだが、うちは見ての通りそんなもの提供しておらん」


「さっき、獣系怪物の討伐が済んだらしいって、食肉業者が言ってたよ」


「ということは商売替えどきか・・・?ちょっと市場行ってくるわ」


ゴマ塩頭は


「お客さん、悪いけどもう今日は閉店ね」


と言い残し、去っていった。若者も後を追っていった


「『オリハルコンの鞘』が無い以上作戦は頓挫してしまいました」


サティアンはうつろな目をして呟いた


「『オリハルコンの鞘』ってそんなに今、必要なんですか?」


サティアンはブツブツと今回の作戦を教えてくれた。勇者をバーサーカーにするための装備品リスト。


やぶさかの剣 般若のお面 なけなしの盾 根暗の鎧


以上の4点セットがサティアンご所望の品々である。いつも作戦会議には参加させてもらえなかったが、今回は何故か作戦の肝となる部分をすんなりと教えてもらえた。

これは俺もメンバーとして認められつつあるということなのだろうか。


「あー酒酒酒酒酒」


いつの間にかミサ姉と匿ちゃんはぐでんぐでんに酔っぱらってしまっている。


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