第48話 上があれだと下は苦労する

若者はぼーぜんと立ち尽くしている。まあ当然だよな、あんな馬鹿もう相手にする気も起きんだろう


「うっ・・・ううっ・・」


? 何だ? 泣き声? 誰だ? 誰の声だ


「・・考えて・・くれていた・・」



「勇者さん・・俺らのことを・・」


え?もしかしてカジノ客全員?


「・・そうだ・・全くもってその通り・・勇者さんの言うとうりだ・・」


なんか、変な空気になってきたぞ・・なんだこの奇妙な感じ・・・一体感・・・?


「見捨てられてなかったぞ!俺たちは!」


「うぉおおおおお!」


「勇者!勇者!勇者!勇者!勇者!万歳!」


店内は熱狂した人々で大騒ぎだ。なんだかむわぁあと気温が上昇した気がする


「さあ!賭けだ!賭けを始めよう!ホワイトワーカーも!ブルーワーカーも!エッセンシャルワーカーも!聖職者も!誰もが見な分け隔てなく!賭けができる社会を!そして未来を!」


若者は完全に勇者に洗脳されてしまったのか雄たけびを上げ、何か喚いている。なんだかこれはおかしなことになってきたぞ、不安になる俺


「サティアンさんと匿ちゃんは?」


「勇者があれだけ負けたということは、私のところにコインが回ってくる確率が高いということ」


サティアンはポーカーテーブルで手札とにらめっこしている


「うっ・・・全員みな平等に賭けができる・・・ありがたい」


匿ちゃんはなぜか泣いている 過去に何かあったのだろうか。勇者が店から出ていってからもう5分くらい過ぎようとしている。2人の様子を見るに勇者のことを気にしてはいない


というか忘れているのでは?


やばいな、このままでは仕事にならない


駄目だ・・・ここは俺がしっかりしないと!!


俺は勇者を追って店を出た。辺りを見渡してみる。勇者の姿は見えない。いつのまにか店の前に屋台ができている。カジノで勝った客の膨らんだサイフ目当てだろうか。

売られているものは少しだけ割高な気がした。店の周りをぐるりと一周してみたが勇者はいない


「すいません、馬鹿みませんでしたか」


俺は屋台の店主らしき男に聞いてみた。ああ見たよ、と答えてくれた


あっちと指をさす


すごいな、馬鹿で通じたぞ


指を刺した方に行くと、交換所というところに出た


誰もいない


換金所の周囲には誰もいない。来るのが遅かったのか。勇者を見失ってしまったのか。


「あー熱い」


フードをはずし、深呼吸をした。そしてちょうど腰を掛けるのにちょうどいい石段に座った。さてこれからどうしようか、サティアンはポーカーに熱中だし、ミサ姉も見つからない。匿ちゃんと屋台で何か食おうかなどと考えていると、ボソボソと声が聞こえてきた。換金所の中からだ。


何だ気になる。換金所の裏に回った。


すると、扉があった。


と思った瞬間扉が開いた。

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