第44話 自分のこと面白いと思ってそうなやつ、自分のこと面白いと思っていない面白いやつに現実を思い知らされればいいのに
こんな朝っぱらからカジノなんて
「なかなかの盛況ぶりですね」
「カジノなんて久しぶりに来たな」
すでに行列ができている、モブマントを装着して俺たちも並ぶ。ミサ姉はいない。ここには来ていないのだろうか。列の前のほうから声が聞こえてくる
「おいおい、勇者ともあろうお方がこんなとこで遊んでいていいのかよ」
あ~勇者来てたんだ。別に驚きはしなかった。俺も成長してきたということか、それとも感覚がマヒしているだけなのか、どう気持ちを整理すればいいのかもうわからなくなってきている。
「勇者!お前に一言ものもーす!」
突然、やんちゃそうな男が勇者に絡みだした
「あれ、炎上系のやつだろ」
列に並んでいた若者たちが囁き合う
「勇者!あなた勇者!だよね!勇者はこんなとこで遊んじゃだぁ~めぇ~ でしょ!」
「も~っとほかにやることがあるんじゃないかと思うんだけど!」
やんちゃそうな男は騒ぎ出したが勇者は涼しげな顔ですましている。その様子を見ていたほかの客たちも騒ぎ出した。
「自分のこと面白いと思ってるオッサン!いいからまともな職につきな!」
「はぁ~?人の事言えるんですか~?」
客たちが勇者の周りで言い合いをしている。そんな状況で勇者は悠然と立ち尽くしている。まるでこの状況を眺めて楽しんでいるようにも見える。
「えーそれではそろそろ開店します、入場される方はきちんと整列してください」
黒服が案内を始めたが、言い合いは終わらない
「勇者さん、アンタ本当に強いのかどうか試させてくださいよ」
炎上系と呼ばれた若者がいきり立ちながらズンズンと勇者の前に立ちはだかる。黒服が4人、勇者と若者の間に入る
「お客さま、ほかの人のご迷惑となりますのでどうかお帰りを」
「なんだお前らに用はないぞ」
「私どもも手荒な真似はしとうございません、どうかお帰りを」
黒服たちは態度、口調こそ冷静かつ丁寧だが、若者の態度次第では今にも即発しそうだ。闘気のオーラが伝わってくる。騒いでいた客たちもいつの間にか静まり返り、2人に注目し続けている。
「そうはいかねえな、店の中で仲間と遊ぶ約束があるんだ」
「それではそちらをこちらに預けてください、お帰りの際にお返しします」
黒服は若者の背中に背負った剣を指さしながらそういった
「そういうわけにもいかねえな・・・」
「ええい!てめぇいいかげんにしろ!」
黒服はしびれを切らし、指を刺したままで怒号を上げた
「剣を預けるか!?このまま帰るか!?どちらかにしろ!」
若者は柄を握る。黒服たちはサッと散開し、若者を取り囲む
「剣はこのまま背負ったままで店に入らせてもらう」
そういうと、ほんの数ミリ抜刀し、カチン!と納刀した音を鳴らした。そのとたん、黒服の指先から火が出た。
ローソクのようだ
「うおっ!?なんだコレ?熱い!」
火が服の袖に燃え移り、慌てて火消しにかかる
「キサマ、何をした?」
後ろから黒服の1人がとびかかろうとする。再び若者はカチンと音を鳴らす
「げっ!?頭に火が!?」
火だるまになりそうになる黒服2人。燃えてない黒服たちは店内から水をもってきて消し止めた
「俺の炎、もっと欲しいか?」
若者は黒服たちに向かって凄む。黒服たちは完全に戦意喪失だ
「ふーこんなのじゃ炎上のうちにも入らねえな、でもウォーミングアップにはなったかな」
「あ・・あれは・・・初めて見た」
俺はゴクリと唾を飲み込んだ
「どうしたのピぃちゃん」
「あの人は同属武具の使い手です」
「なんですかそれは?」サティアンも話に割って入ってくる
「いやずっと前に先輩から聞いただけで、知っていた訳では無いのですが--」
俺は二人に説明を始めた
ベルクートにいた時、特殊同属武具受注という珍しい仕事が入ってきたと親方が笑いながら現場に入ってきたことがあった。先輩たちは初めて取り掛かる仕事に悪戦苦闘しているようで連日残業でピリピリしていた。
秘密裏に強い怪物が出るとかいう噂の何とか火山にまで素材をとりに(なんで職人が直接いかねばならんのだ?)まで行かされていたと後に先輩から教えられていた
苦労のかいあってか仕事は成功した
その日の朝、職場に行くと、炎属性の刀が炎属性の鞘に綺麗に収まっていた
初めて見た時はああ、綺麗だな、くらいにしか思わなかった
そして大分後になって知ったことだったが、同じ属性の剣を鞘は磁石のように反発しあう現象が発生するため、普通は納められないのだ
基本的に属性武具は無属性、もしくは異属性の鞘に納めるよう国から推奨されている
同属性武具はエフェクト効果が強すぎて、その反動も人体に悪影響を及ぼす
使いこなせる人間はまずいないのだ
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