第40話 こちらは王様に報告中の大臣です。
大臣は国中から提出された書類をまとめ上げた機密文書を両手に持ち、冷や汗をかきながら
「王様、申し上げます」
と玉座の間にて恐る恐る声を上げた。
「徴税の件ですが、やはり少々不自然な動きがあります。調査部隊を派遣いたします」
「・・・あぁ、いいよもう、必要ない」
王様はダルそうな声で答えた。
「・・・は?よろしいのですか」
「構わん、ほおって起きなさい」
マジかよ・・大臣は狼狽えた。
「大臣よ、この国に必要なものはなんじゃと思う」
「は、それはもちろん経済の活性化、かと、古い言葉に『キズナのつなぎ目が金の流れ』などと申しましてーー
「違う!」
大臣の言葉を遮る罵声が玉座に響き渡る。ちょっとふざけたのがまずかったか?
「笑顔じゃ、この国に足りないものは笑顔」
「・・・は!?」
「いや最近思うんじゃが、キャピタリズムでこの国結構いいとこまで来てると思うんだけど、でかい赤い国の、ほら、みんなで一緒に分配しよう的な考え方の人が、世界中にいらんものまで配ってくれたわけじゃろ?だから補佐的にニヒリズムを取り入れようかと思うのじゃ」
大臣は圧倒され声が出ない。つまり、どういうことでしょうか・・・?
「練習するぞ、ほれニヒルに!」
・・・に、ニヒルって!?
大臣はいけ好かない二枚目俳優を頭に思い浮かべ、やってみる。
「違う、口角をこうあげるのじゃ!」
「に、ニヒッ!」
「おお良くなったぞ、その調子じゃ!ニヒッ!」
「は、はっ!ニヒッ」
「ニヒニヒニヒッ!!」
「ニヒッ!ニヒッ!ニヒッ!」
「ニヒヒヒヒ!」
「ニヒニヒニヒニヒ、ニヒヒのニヒッ!」
王様は満足げに頷いた。
「大臣よ、そちもニヒルじゃのう」
「いえ、王様には敵いません」
『ニーッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ!』
バタンと扉を閉じて出ていく大臣は疲弊していた。
(ニヒリズムってニヒニヒ笑うことじゃないんだけどなあ)
ニヒリズムあるいは虚無主義(きょむしゅぎ、英: Nihilism、独: Nihilismus)とは、今生きている世界、特に過去および現在における人間の存在には意義、目的、理解できるような真理、本質的な価値などがないと主張する哲学的な立場である。Wikiよりコピペ
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