第37話 しかし知りすぎるのも良くないのか?

だが今のミサ姉の話は本当だと俺は確信している。サティアンは信じていないみたいだが。記憶の世界でみた「ホームレス科」と資料、あれと符号している。それだけではなく、職人失踪事件は俺も覚えている。


「宝箱の中身は何だったんですか?」


これも無視されると思いきや、答えが返ってきた


「あたしたちだよ」


「え?」


「私と岬さん、です」


なんとギュウギュウ詰めで2人が箱の中に入っていて、勇者一行を待ち伏せしていたというのが答え


「あなたが突然部屋に入ってきて、ブツブツ何か言いながら千鳥足で周り出した時はどうしようかと思いました」


じと~っと見つめてこられる


とっても恥ずかしい


・・・


俺はステップも満足に踏むことができないのか


猛省!


そして放心・・・


「~~~報告書はそう書いとく。だからお前、気をつけろよ」


「はい、わかりました」


俺はミサ姉に空返事を返した。何を言われたのかよくわからないままに。地上に戻ってくると、拠点としている逢引宿に戻った。


「おお、お帰りピぃちゃん」


匿ちゃんがいた。床にはズラリとアーマーが並べてある


「どうだ、良い眺めだろう」


「良い眺めですね」


「このアーマー今から全部売ってくる。結構いい金になると思うから」


匿ちゃんはアーマーを10着重ね着した!


しかし1着だけ装備できなかった


「では行ってくる!」


「ふふっ、体が15.7倍くらいに膨れ上がってますよ、ごゆっくり」


ズシン!ズシン!と床を鳴らしながら出ていった


俺は残していったアーマーを装備してみようとしたができなかった


ぱっと見た感じはベルクート製だが、よく見ると微妙に違った


型番を見てみるとSR:###となっていた


この型番は量産型アーマーには使わない。アーマーを部屋の隅に置いた。


その時、仄かにビールの匂いがした。


「あれ、このアーマーさっきまでいた盗賊の保管庫にあったやつではないか?」


ということは匿ちゃんがアーマーを持ち出したということか?


「ただいまー」


ホクホク顔で徳ちゃんが帰ってきた。


「さっきのアーマー、下水道にあったんじゃないですか」


俺がそう聞いた途端に真顔になる。


「さぁ~何のあれのことでしょ???」


俺の技を真似されたのは初めてだ。ミサ姉の気持ちがよく分かる。


すげぇムカつく


「あのねぇ、どうせ勇者にもっていかれるくらいだったら自分の金にした方がいいでしょ」


なんという単純明快な回答、汚職議員も記者会見の際には見習っていただきたいものである。匿ちゃんは悪びれる様子もなく、自分の部屋に戻っていった


俺はさすがにダメだろうと思い、こっそり報告書にこのことを書いた。


報告書を書きながら昔の職人失踪事件を思い出す。通り魔が突然現れ、質問に答えると神隠しにあうとか、異世界に飛ばされるとか当時は様々な憶測が飛び交っていた。


犠牲者は20人以上にも及んだはずだ。そして今現在までに誰一人帰ってこなかった。


一体だれが何のためにやったのか、全くわからないまま時は過ぎ去ってしまった。


失踪した職人の残された家族のことを思うと気の毒な気分になった。恐らく魔王軍の手のものが、これ以上城の防衛を強固なものにしないためにやったのだろうなと自分では思っている。


とそこまで考えたところで、書き上げた報告書を懐にしまいこんだ。


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