第34話 仕事を増やしてどうすると先輩に注意された時のことを思い出す。
近くに危険が迫っている・・・だと?
「羽根付餃子で羽根つき!」
おかしなことを言う男が2人寄ってきた。芸人か?と一瞬思ったが顔をみて俺はすぐフードを被った。
こいつらは・・・あいつらだ!
「あれぇ、うけねぇじゃんおかしいなぁ~」
「反省会しないといけないかね~どう思いますぅ~」
2人組は法廷画家に絡み始めた。温泉で会った海賊と山賊の一味だ!
「キシシ・・・キシシ・・・キシシ!!」
不気味な笑い声をあげたかと思うと、突き出された羽根突き餃子を払いのけ店を飛び出していった。餃子は空中で4分割され、二人の目に直撃した。
「畜生、ラー油が眼に入った!」
「ぐああ!目が開けられない!痛い!」
2人はのたうち回りながら店の台所に飛び込んでいった。
「ちょっとお客さん困りますよ!」
2人は店主を押しのけると、冷蔵庫の扉を開けてしまい、中の食材を全部床にぶちまけてしまった。
「あー店の中がめちゃくちゃだ~」
泣きそうな声で店主が言った。
散らばった食材の中に、レトルトパックがあるのが目に付いた。
(あれ、記憶の世界でみた子どもが食べてたペースト食にそっくりだ)
俺は店から飛び出すと法廷画家を探した。あいつは使える。あの能力はすばらしい。
どこだ?どこへ行った?
「ピィちゃんか?」
声ををかけられた気がした。振り向くと匿ちゃんがいた。モブマントは装着していない。その代わり魚河岸で漁師が身に着けるラバー製の長靴とエプロンが一体化したようなやつを履いている。
俺はフードを少しだけ上げてアイコンタクトをとる。モブマントを着ていても、俺だと見抜けるとはさすが大ベテランの匿ちゃんである。
「ベレー帽を被った人、見かけませんでした?」
「うん?見てないぞ」
先ほど店の周りは一度ぐるりと回ってみたがいなかった。匿ちゃんは裁判所の方から歩いてきたので、反対の公園の方に向かっていったということになる。
俺はさっきあった出来事を説明した。すると匿ちゃんの顔がみるみる青くなった。
かと思ったら今度は真っ赤になって
「そいつ、今すぐ探すぞ!」
と叫んだ。
裁判所まで全力疾走し、警備員や役人に聞いてみたが
「・・・・・・・・さぁ・・・」
というおもいっきり他人事の返事が返ってきた。軽く首を傾げるという癪なリアクションもつけてくれた。今日も一日、平穏無事な日でありますように、ネ!(ウィンク)さすがはこの道のプロ、以下の質問に答えよ
これ以上仕事を増やしてどうする?
「ここにいないということは、もう手掛かりもないですし・・・」
俺はもう諦めの境地に達していた。というか疲れた。
あの法廷画家はホムクルと呼ばれているらしい。
元々は似顔絵屋さんとして、街角や公園などで通行人相手に個人で商売をしていたが、どういうわけかスケッチされてしまった人は、大体の人が人間関係がこじれてしまい、トラブルに巻き込まれてしまう。
犯罪を犯してしまう人まであらわれ、容疑者の顔写真と一緒に、ホムクルが描いた似顔絵が新聞に掲載されてしまうということが多々あったそうなのである。
ホムクルは市民から、あんたに似顔絵を描いてもらうと、魂を抜かれるとか、いろいろ言われてしまい、市の条例で絵を描くことは禁止されてしまった。
とまあこんな具合で要注意人物であることが匿ちゃんの口から説明されたのだが、記憶の世界に飛び込めることは聞かされなかった。
(・・・これは・・・逃げだせるチャンスかもしれない!)
俺と匿ちゃんは休憩を取ることにした。公園のベンチに腰掛ける。
「ところでその恰好はどうしたんですか?」
「ああ、これはな今から城の堀の水を抜くから、その準備のためだ」
「なんで水を抜くのですか?」
「勇者に試練を与えるためだ」
「はぁ・・」
俺は怪訝な顔をして匿ちゃんを見つめる。匿ちゃんは説明を続けた。
「お堀の水を抜くとダンジョンがある。そこへ勇者一行を中に引き込む。勇者には【城には秘密のダンジョンがあって宝がある】という噂を吹き込んでおいたんだ」
「なるほど、そういうことですか」
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