第32話 一肌脱ぐとか偉そうなこといったけど何もできませんでした。
俺はまず「校長室」へと向かった。向かう途中、「準備室」とかいう倉庫みたいなところへ先ほど言い争っていた二人が何故かこそこそと入っていったのを目撃した。
喧嘩するほど仲がいい、ということか!?
2人が入っていったドアをガツン!と蹴飛ばしてやってから「校長室」に向かった。
なぜ校長室かというと、権力者、あるいは責任者の部屋を調査すると、「物語を進めるうえで貴重なものが発見できる」
そういうものだと思っているからである。校長室の扉を開けると中々豪華絢爛な光景が目に飛び込んできた。床はフカフカの赤いじゅうたんで敷き詰められており、山吹色の線で眼のマークがデザインされている。
部屋の奥には黒檀の机がでんと置いてあり、机の上には煙草が入ったシガーボックスとクリスタル製の灰皿があった。他にも花瓶やシャンデリア、ランプ、壁時計など置いてあるものはみなすべて高価そうなものばかりだ。
そしてひときわ目を引いたのが壁に埋め込まれた金庫だ。
「理由があるから鍵がかかっているんだ、解るよな!?」
金庫にこういわれた気がした。
「ここの学園の生徒はみんな、容姿端麗、文武両道、頭脳明晰、大器晩成だ」
「文句があるならいってみな!?」
頭の中にそんなセリフが響いた・・・部屋中の家具がそう訴えかけているからなのか・・・そんな気がした。4つ目の四字熟語だけがちょっと引っかかったが。だがピーンときた。この部屋の主は・・・妖術師だ!
巧みな話術で人々を魅了し、自らの利益になるよう誘導することを得意とするヤツだ。
何者かに見られている気がしながらも机の引き出しや、額縁の裏など調べられそうなところは全部調べた。
しかし特に手掛かりは見つからなかった。手が埃で少し汚れただけだった。
窓から運動場が見える。
ここの子どもたちがきちんと整列して行進の練習をしている。この部屋を調べるのはやめて、職員室に向かった。この部屋から出るときもやはり視線を感じた。
ゴクリと息をのんで、思い切って振り返ってみる。
誰もいない。シンボルマークの目玉が描いてあるだけだ。
校長室から出ると『職員室』に入ってみる。
部屋には誰もいない。教室で生徒が使っている机より二回りは大きな机が並んでいる。机の島が二つあり、島は机6個である。1つの机をあさろうとしたとき、ちょうど机の上に置かれた黒い表紙のファイルが目についた。
「ホームレス科、卒業名簿」
手に取って表紙をめくってみると、どこかで見かけたような人物画が現れた。じーっと見つめてみる。この顔絶対どこかで見かけたことがある。
だが思い出せなかった。
次のページをめくってみると俺は思わず吹き出しそうになった。
そこにはうら若きミサ姉がガチムチのおじさんと取っ組み合いをしている写真が出てきたからだ。
写真はまだ何枚かあった。
1枚目はこれから就職活動でもしようか、というほど真面目な顔の写真で、髪の毛が墨汁でも被ったのかと思うくらい真っ黒で(この写真が一番面白かった)裏を見ると文字を擦って消した後があった。
2枚目は固く目を瞑り、唇をつき出している写真。隣にはミサねえのクラスメート思われる女の子が写っている。黒髪のロングストレートで一見してみると清楚だが、よく見るとどんよりとしたオーラを放ち、藁人形で人を呪い殺していそうな勢いのある眼をしている。
まるで対照的なコンビだと思った。
しかし、これではまるでアイドルのブロマイド写真である。裏をめくると左4点、右5点(10点満点)と書いてあった。
そして先ほどみた3枚目、このガチムチは本当に教師なのだろうか・・・裏を見てみたが何かこぼしたような薄っすら汚れた後があるだけで何も書いていない。
写真をしまい、ファイルを元の状態に戻すと校内アナウンスが流れてきた。
「・・・キサマ・・・ソンナトコロでナニヲシテいる」
ぞわぞわする声だ。
また誰か侵入してきたのであろうか。騒がしいところだここは。窓の外を見ると、子どもたちが整列したまま演説を聴いている。演説が続いていくうちに何人かの生徒がパタパタと倒れた。
「やはり・・・な」と俺は呟いた。
倒れた子どもはほかの子どもたちに運ばれていく。貧血だと騒いている子どもがいるが、馬鹿めわからんのか。
妖術師のパワーに知らず知らずのうちに精神と肉体が蝕まれているのだ。
さて、大体見れるところは見たし、お次はどうしようかと逡巡しながら、机の島の周りを歩いた。そして一瞬部屋の中に違和感を感じた。なんか、部屋が狭くなった気がする。
ふと横見るとあの皮を剥いだヤギのようなやつが立っていた。
あ、どうも ってさっきの声の主はスピーカーではなくこい----
俺はまたもやものすごい力で吹き飛ばされた。一切の圧力を感じることなく、雲の上まで、ほんの一秒たらずで飛ばされた気がした。目の前が真っ白になった。
ものすごく強烈な白い光が目の前に広がり、何も見えなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます