第31話 生徒が勉強しているか監視しよう。

台座にはコケが生えていたりしてあまり管理が行き届いていないようだと感じた

(こいつがこの私立術式学園とかいうマルチ商法の親玉か・・・)

胸像を眺めるのに飽きると俺は透明なのをいいことに次々と教室を覗いていった


刀を研ぐ授業、杖を磨く授業、書類の書き取り、商法、税法、生肉を解凍するなど・・なかなか実技的なことをやっているみたいだ。


ちょび髭を蓄えたメガネ教師の怒号が廊下まで聞こえてくる。


「いいか!君たちは王国からすれば!モルモットなんだ!ここを無事に卒業できたとして!生きるすべを!自分で!身に着けていかないと!いけないんだ!」


大体こんなことを熱弁している。あながち嘘でもない、語気を強めた声で、真剣味が伝わってくる。


「んー?これは・・・」


廊下を奥に向かって進んでいくと、段ボールで作った札のかかった教室に突き当たった。


札にはこう書かれている。


『ホームレス科』


(ホームレス科だと?ここはホームレスになるための部屋なのか?)


明かりがついていないため、中は薄暗くてよく見えないが、何人かの人影が見える。


机に何人か座っているようにも見える。


「あーまた補習だわ」


中から声が聞こえてきた。


「お前この本読んだか?『私がホームレスになるだなんて~一寸先は闇、大不況時代』」


「あーそれよりこっちの『落伍者より学ぶ!地獄道の歩き方』のが気になって、まだ読んでないわ」


「もう感想文書いたの?ちょっと見せてよ」


「お前らぁなぁ~人にばっかり頼っていると、マジでホームレスになっちまうぞ。感想文くらいじぶんでかけやぁ~」


「わ~ぉ!出ました。意識高い系、補習組リーダー!」


「誰がリーダーだ!お前らのリーダーとか絶対嫌じゃ!」


「あーもう本読みすぎで疲れたわ、パンケーキ食べたい。補習はだるい。」


(なんだ、ホームレス科とかいうから、てっきり廃材を使って小屋をワークショップするとか、空き缶とか古新聞雑誌なんかを集める方法を学ぶのかと思ったら、ただの補習かよ)


「うっ!おーーーっっ!!」


突然、叫び声が廊下に響いた。窓ガラスをぶち破って出ていった生徒の声だった。ホームレス科に走り込んで行った。


「はぁはぁ、ゼイゼイ・・」


「・・・・よぅお疲れ」


「なんか、また何かやらかした雰囲気じゃない?」


補習トリオは平たい目で彼を見つめている。


「ジュース飲む?」


パンケーキを所望されていた生徒が差し出したボトルを払いのけると教室の一番前に座り込んだ。


そして一言


「今日、あいつが来ていたぞ」


「あいつ・・・?」


一瞬静まり返る

「あ~あいつね!あいつ!」


イシキタカスギがすべてを得心したかのような声を上げる


「あ~」


「あいつかよ!なるほどね~・・・・」


他の2人も相槌を打つが自信なさげである


「・・・」


イシキタカスギは(#^^#)から(゜-゜)へと変貌をとげ、ついには(´・ω・`)になり、沈黙に耐えられなくなったのか


「・・・あいつって誰の事よ」


と本音を切り出した


すっかり息が整ったマドブチ ワリヲはすくりと立ち上がった


「あのおっさんのことだよ、勝手に入ってきて校内をウロウロして」


「ちょっと!ストップ!」


イシキタカスギが話を遮る


「良いかよく聞け、そんなおっさんが校内に入ってくるわけない、いるはずがない なぜならここは学校だからだ。」


他の2人もうんうんとうなづく


「俺たちは集団で幻覚を見たんだ」


「あー幻覚ならどうせなら可愛い子がいいなあ、それもパンケーキを咥えて廊下を歩くとか。ゾンビみたいなおっさんじゃなぁ」


「お前ら、ちょっと黙れ」


イシキタカスギが今度は2人を遮る


「学校というところは教師と生徒しかいないんだ。いやいてはいけないんだ。ゾンビがいるわけがない、どうしてかって? それはゾンビが現れるなんてそんなことあるわけないからだ」


「お前ら、今のままでいいのかよ、あんなのがいつまでもいたら、そのうち他校やらマスコミ関係者にでも気づかれて、いろいろ騒がれて大変なことになるぞ」


「そんなの俺達には関係ないよ、ただ病気の人だし」


「俺らがどうこうできる問題じゃないし」


「帰ってパンケーキ食べたいし」


「俺たちの学園だぞ!みんなで守らなきゃダメじゃないか!」


「・・・YOU!選挙にでも出て、当選してからI・E・YO!!」


イシキタカスギの突然キャラチェンジ、そして暴言


「いったな!貴様ぁ!」


いきり立つワリオ


ホームレス科はどったんばったん大騒ぎだ


(ようし!ここはひとつ、彼らが学業に専念できるように、俺が一肌脱いでやろう)

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