第16話 取り調べ
一方その頃、岬と匿三は・・・
「あのガキ!マジでどこ行きやがったんだ!」
「ピィちゃん、めちゃくちゃ逃げ足速かったなぁ」
「なにがサティアンさんいじめられてませんよだ!」
「意外と多才だよな~ピィちゃん」
ふふっ、と徳ちゃんこと匿三は思い出しながら笑った。
「まあ、でもあんな手に引っかかるとか、お前の落ち度なんじゃないか」
匿三は岬のミスをチクリと責める。
「はあ!?お前だって現場にいただろう、レ・ン・タ・イ・セ・キ・ニ・ン!」
「いえ、私はあなたが サガッテチョウダイ とおっしゃるからそうしたまでですよ Miss MISAKI :( 」
「うがー ムカツク!」
足元にあった石ころを蹴飛ばす。石はさっき鍛冶屋の前のところで捕まえた男の股間に直撃した。
おぐっ・・・と悲鳴を上げた男は目を覚ます。
「いってぇ」
男は縛り上げられている。よう、お目覚めか~と匿三は声を男にかける。
「あんたの仕業か??」
男は匿三を睨みつける。
「俺じゃない、あっち」
岬のほうを指差す。ギロリと睨みつけるが、岬はどこ吹く風だ。
「なあ、解いてくれよ、これ」
男は懇願した。
「駄目だ、取調べがすんじゃいない」
匿三は冷たく言い放つ。
「お前と会うのはもう、3回目だな、盗賊君。鍛冶屋から何を盗み出したのか知らないが」
「僕は何も取ってないよ」
「その前は食い逃げ」岬が下げずんだ声で言った。
「関係ないだろ」
「そしてその前は鎧泥棒」匿三がついでという感じで言った。
「うぐぐ・・・」
僕は盗賊を生業にして生きてきた。子供の頃から何かに没頭すると、周りが見えなくなるくらいの集中力を発揮する能力があった。僕はこの能力で良くも悪くも今まで生きてこられた。
簡単な鍵のかかった扉ならすぐ開けることができる。というか、この世に自分に開けられない扉など無い。そう信じて生きてきたというのに。今では前科三犯、鎧泥棒、食い逃げ、不法侵入現行犯。
そして捕まって縛り上げられ、金的を喰らってもがいている。情けない・・・
一度躓いてしまうと連続でヘマばかりだ。ああ、面白くない。
あのベルクートとかいう鍛冶屋、あれが躓きのきっかけだった。
「オリハルコン」さえ手に入れば、僕は今頃・・・はぁ。
あの時は、人が無茶苦茶ごったがえして、剣を抜くと賞金が出るというイベントだったみたいだけど、人波にもまれて誰かに脚を踏まれたり、肘鉄を食らったり散々な目にあった。
腹いせに鎧を一つ持って帰ってやろうとしたところ、いきなり胸倉つかまれて
「盗みはしちゃいけないって、学校で習わなかったのか」と凄まれた。
だまっていたら「わかんねぇなら親よんでこいやゴラァ!!」と怒鳴られた。
そして兵士に留置場に放り込まれ、麦飯と筍の煮物、おふの味噌汁と漬物を食し、腹も気分も落ち着いたところで脱走した。
牢の鍵は割り箸を歯で噛んで形を整えたものでクリアできた。生まれてはじめて臭い飯を食ったが、けっこういいもんだすよ、ああゆうとこも食堂のマスターに伝えたところ
「うちの料理は監獄食に劣るといいたいのかい!?」とぶち切れられた。
誤解を招く言い方だったかと、一瞬反省したが、まてよたしかにココの飯は素直に美味しいとはいえなかった。たぶんよっぽとおなかがすいているか、おいしいと思い込んでいかないと、食が進まないと思う。
頭にきた僕は「ああ、不味いね 金なんか出せるか」といい、立ち上がって(この時、サイフを持っていないことに気がついた 牢に入れられたときとりあげられたのを忘れていた)そのままの勢いで店の外に飛び出したんだ。
マスターの「食い逃げジャー!食い逃げ!」という叫び声が聞こえてきて、やばいと思い、もうダッシュで逃げた わずか15メートルほどで捕まった。
尻の穴に突然激痛が走ったのだ。足がこんがらがり転んだ。そのまま、また留置場に連れて行かれた。
今度は先客がいた。そいつは僕に「大臣にハメられた」とか聞いてもないのに言ってきた。尻の穴に刺さっていた手裏剣を抜くと、早速これを使って鍵を開けて脱獄した。
「すいませんねぇ、あたしまで出してもらっちゃって」
先客に礼を言われたけど、知らん好きにしろ、この僕に鍵なんて意味は無い。鍛冶屋にリベンジしてやると決意した。僕はなんとしても「オリハルコン」がほしかった。
鍛冶屋ベルクートには必ずあるはずだ。鍛冶屋に侵入しようと裏口にべったり張り付いていろいろやってみたがびくともしなかった。あの扉、まるで何か意思があるみたいだった。うまくいえないが拒絶反応を感じだ。内側から人が扉を押さえつけているようだった。
もたもたしているうちに人に見つかった。飛び出したところを脱獄の容疑で捕まった。
「大体、こんな感じさ」
縛られていた縄を解いてもらい、服をパンパン叩いて埃を落としながら、盗賊は立ち上がった。
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