第12話 その秘術の名はエターナルフォーミュラー
報告書を便箋に入れて、ミサ姉さんに手渡す。
「お前、勇者に顔、見られただろ」
どっきーん!
ミサ姉さんがまっすぐ俺を見てくる。
「さ・・・・・・・・・・・さぁ~~~あ・・・何の何の・・あの・・あれのあのことぢょしょ???」
俺の究極秘術、アホの振りして相手の糾弾してくる姿勢を崩し、場を和ませるこのエターナル・フォーミラーを発動する時がきた。
いずれ、この技を出す時がくるとは思ってはいたが、まさかこんなにも早いとは。
一寸先は闇である。ちなみにエターナル・フォーミラーの鍛冶屋での成功率は10%くらいである。それも効いたのは、新入りの後輩の子だけである。
果たして、ミサ姉さんに通用するのか!?
一方その頃・・・
はぁ~マジなんで今頃になって魔王復活してくるんだよ。ミニスター先送りこと、大臣はため息をついて今後のことに頭を悩ませていた。
部下であるサティアンからの報告書によれば、勇者は只今すぐ隣の田舎町の宿でお昼ね中とのこと。町の名産品であるワイン樽を無断で宿に持ち込み、カブのみした挙句、酔っ払ってそのままおねんねである。
剣が抜けたことを口実に、適当に勇者などと肩書きを与え、魔王討伐の責任を持ってもらおうとしたわけであるが、その代償は大臣にとってかなりの負担となった。毎日のように、勇者から被害をうけた住民からの苦情がくる。
書類が山積みである。
勇者のやつ、すぐにモンスターに倒される予定だったのだが、戦闘から逃げ出したり危険を察知するのが異様にうまいのである。
勇者が死んだら有り金全部とラーミアスの剣を回収するようサティアンに命令してあるが、いったいいつになることやら。
テーブルに手を伸ばすと、鶏のもも肉を掴み取り口に運ぶ。
うまい!税金で食う飯はうまし!
大臣は日ごろのストレスを食事で解消していた。ガツガツと料理を平らげながら、報告書と書類に目を通す。
ふん、勇者のやつ、あのワインをタルごとがぶ飲みだと!?
ふざけるな若造が、酒飲みでもないのに、あの銘酒に口をつけるとは・・・
美食家のワシでもそうめったにありつけないというのに。クビリと2級酒をやる。 医者に酒は控えるよういわれたのだが、グレードを下げれば飲んでもかまわないと勝手に解釈して飲酒を続けていた。酒の力でいくらか気分は晴れたものの、現状は何も変わっていない。
酔った頭でぼーっとしていると、唐突にアイデアが降ってきた。おもむろにペンとインキのビンを取り出す。
そして命令書を書き出した。
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