第10話 (本当はダメなのに)勇者と面識ができた。

やばい、いきなりばれるとは。いやヒョロガリはまだ俺のことを鍛冶職人だと思っている。ここは調子をあわせるしかないか・・・


「さっき王様に会ってきてたんだよ、すごいだろ」


自慢げにいってくる。


「え~王様に会うとかご冗談でしょ、会って何をするんです?」


「ん~まあその野暮用・・・かな」


「王様の野暮用って、何ですか?(笑)」


うわぁ~くっそめんどくせぇ!けど仕方ないよなぁ。調子を合わせながら、二人で武器屋の前に来る。


「あの細長くて、きれいな剣がいいなぁ」


あれはラーミアスの剣(6000000G)といって、プレミアつきの剣だ。ヒョロガリに使いこなせるわけがない。俺の鍛冶職人としての経験が、「レベルが不足しています」といっている。


お前に扱えるのは、新人の鍛冶職人が受ける昇段試験の際に、失敗してできるポンコツの剣(10G)だけだよ。装備できなきゃ買っても意味が無いことを伝えたいが、匿ちゃんは?いないみたいだ。


ヒョロガリはラーミアスの剣を道具袋にいれ、ポンコツの剣を腰に差す。完全に宝の持ち腐れじゃん。てかそんなの買う金、よくもってたなコイツ。武器屋からやたらとでかい声で、ありがとうございましたーと言われる。ごきげんだな店主。


「私は今試されているのだ」


突然神妙な顔をしてヒョロガリは語りだす。


「私は今、ものすごく大切な決断を迫られている」


何だコイツ?


突然何だ?おかしくなったのか?


「試されているって誰にな?」


俺は少し呆れながらも、それでも話しに付き合う。


「我が国の王!」


ヒョロガリは鼻息を荒くしながら、単独公演を始めた。


興奮の為か体がゆらゆら動く。その様は海中のワカメみたいだ。


「なんで俺が勇者になるの~絶対やだよ~そんなの~って思ったよ~そりゃあね、びっくりするじゃないの、いきなり呼び出されてさぁ~でもねぇ、あの剣がお前を選んだんだからしょうがないだろって説得されたのよ~なあんであの剣俺を選んだのかしらないけどさ~なあんであの剣俺を選んだのかしらないけどさ~まあでもそこはさぁ、俺も大人だしさあ、条件しだいでさあ、いいよやってもって!まあヤラシイ話?お金のこととかいろいろ勇者の特典とかつけてもらったのよ~」


勇者の特典?なぜだろうなんだか嫌な予感がする


「特典ってなんですか?」

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