第7話 嫌なことを思い出すという作業をこなした俺をどうか讃えてほしい。
先輩たちから話を切り上げ、店の外に出る。
そこへ、すーっと俺と同じモブマントを着た3人組が寄ってきた。
ここを思い出すと頭が痛くなってくる。
そのときの俺はもう鍛冶職人としての人生が絶たれたことに絶望していた。
あのモブマントの3人組と新たな人生をはじめることになったのだ。これは自分の意思でというわけではない。
いわゆる同調圧力。あらゆる共同体で普段はあまり目立たない、毒にも薬にもならない人間が、スケープゴートに仕立てるがために、スポットライトを浴びせ、華やかなデビューを飾らせられた者は、その瞬間だけ華々しく拍手喝采を浴びせられる。
その後、否応無く労働を架せられ、その待遇たるや、クラスの女子がその働き振りを批評しあい、人気のあるもの、そうでない者との評価の差は、どうみても平等の精神とは程遠く、この世は不条理であることを幼心に刻まれた。
恐怖で汗がびっしょりである。3人組は俺にその同調圧力を加えてきていた。
「お前、そのマントどうしたんだ」
鋭いアイシャドウをした目つきで尋問してくる。鳶職風の女の子だ。
「へ?・・・いや、その・・・拾った」
俺は素直に応える。
「他には?」
何のことかわからずドギマギしているともう一人の男が
「かばんとか、荷物があったろう」
ああ、かばんの中身は全部一つ一つ入念にチェックして整理整頓して自室においてあるよ。返せというなら返すよ。謝礼とかあるの?お礼をうけとることはやぶさかではありませんよ、という旨の返答をした。
すると3人はなにやら話し出し、はぁ~とため息をついたり、なにやらイライラしながら頭を抱え込んでみたりしだした。
「謝礼をさせてもらいますから、ちょっとついてきてくれませんかねぇ」
3人の中で一番背の低いやつが、俺に提案してきた。
むほっ!
これは嬉しい!
俺はホイホイついてゆく。大通りからはずれ、裏路地にはいってゆく。
ここいらへんは、かつて工業団地だったのだが、うちの鍛冶場が市場を独占したため、人がいなくなりゴーストタウン化しつつある過疎地域だ。
人を拉致したり、誘拐して人質をかくまっておくには絶好の場所だ。
こんなところに入ってゆくなんて、この人たちはなんて勇敢なんだろう。
俺はこの三人に尊敬の念を抱きつつあった。
3人は俺を取り囲むようにして歩いてゆく。背の低いのが先頭で、鍵のかかっている扉のドアノブを次々と捻ってゆく。
鍵のかけ忘れをチェックしているのか?
後ろには男、しきりに周囲を気にしている。
鳶女は何故か屋根の上までひょいひょい上り、大丈夫だと合図を送っている。
気がつくと俺は、いすに座らされ、縛り上げられていた。
ドアが開いたと思ったら、中に入るよう促され、入ったとたん羽交い絞めにされた。
もう、なんなのもう!
俺は足掻いたが無駄だった。
だって、この3人、くっそ怖いんですもの。
男の壁ドン、女の股ドン、そして小さいやつの
「こんなことになってすみませんねぇ」と柔らかな物腰。
アメとムチである。
あまりにも、残酷な描写なのでここは割愛させていたただく
っーか思い出したくも無い。
散々凌辱的に尋問され、わかったことは
・メンバーの1人が下手を打ち、魔王軍にやられてしまった
・職務を全うする為、遺体から所有物まで全て回収するはずであった
・それを非常識なことに、遺体から勝手にどっかのバカがもって行ってしまった
どっかのバカ←俺のこと
・こんなことが、上にばれたら怒られる だから・・・
「俺もあんたらと一緒にいくの?やられた人のかわりに?」
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