大きなお世話
夕方から降り出した大雪のせいで高速道路が麻痺し、私の乗った車が雪の中に立ち往生してから早6時間が過ぎていた。
今年購入したばかりの愛車はEV(電気自動車)で、バッテリーの残量も現時点で90%以上あるからエアコンのほうは大丈夫だろう。
問題は空腹と、あとは空気の悪さだ。すぐ前のトラックも立ち往生しているので、排気ガスがこちらの車内に流れ込んでくる。
空気が悪いためか、さっきから生あくびが頻繁に出る。明日になっても身動きが取れないようなら、自衛隊か誰かが食料配給に来てくれるだろう。空腹をごまかすためにも、今は少し睡眠を取るか。
私は助手席に放り出していたダウンジャケットを頭からすっぽりかぶって目を閉じた。ナビゲーション画面の右下に表示されたメッセージにも気づかずに。
「これよりカーOSのセキュリティ定期アップデートを自動実行します。
アップデート中はカーナビ、エアコンなども全て停止します。
なお電波状態により完了までは30分から数時間かかり……」
*****
翌朝、現場に到着した鑑識課員は首をひねっていた。
「この車、暖房はガンガンついてるのに、運転手は明らかな凍死の所見なんだよなあ」
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